藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
結婚生活に異変あり
うるさい三橋
白川医科大の食堂はカフェテリアのように明るくおしゃれな空間である。さんさんと差し込む日の光、そこかしこに配置された緑が目に優しく森の中にいるようだ、と評判だ。彬の研究室の助手たちによれば、癒される……らしい。
その感覚は彬にはわからないが、患者が癒されるならいいと思う。無駄ではないが、それにしてもメニューが多いのはいただけない。
食券を買うのに迷う客が多発して並んでいるこちらは無駄な時間が発生する。
彬自身は毎日決まって日替わり定食。考える時間が省けるし、栄養のバランスが自動的に調整される。
「よう、藤堂」
カニクリームコロッケ、ごぼうサラダ、ピクルスとパンが並んだ盆を持って、窓際の席に座ると同時に声をかけられる。同じように盆を持った三橋がいた。
「俺も今から飯なんだ。ここいい?」
そして彬が返事をする前に向かいの席に腰を下ろした。
三橋の向こう側で看護師と思われるふたり組がこちらを見て、ひそひそと囁き合っている。くすくす笑っているのは、"ヒューマロイドが食事をしている"と冗談でも言っているのだろうか。
手を合わせて食べはじめると、三橋が身を乗り出した。
「で? どうよ、どうよ。可愛い妻との新婚生活は」
予想通りの問いかけに、彬は「べつにどうもこうもない」と答えた。
「そんなわけないだろ。新婚一週間なんだから。あー! まさかお前に先を越されるとは思わなかったなー。悔しいけどそれ以上に面白いから許す」
なぜ俺の結婚にお前の許しがいるのだ、と思いながら食べ続ける。無駄な言葉には答えないことにしている。
「見合いから一カ月で結婚なんて、思い切ったなあ。でも式も新婚旅行もなしなんて奥さんは納得したん?」
「もちろんだ」
もとより、通常の夫婦ではないのだ。いずれ離婚するのだからお披露目は不要だし、彼女が行きたがっているのは、自分との旅行ではない。
見合いから一カ月で届けを出し同居を始めたのは、とにかく早く家を出たい、という藍の希望に沿ってのことだ。
彼女の手術は、主治医はなるべく早く行いたいようで遅くても二年以内に、と言われている。
その感覚は彬にはわからないが、患者が癒されるならいいと思う。無駄ではないが、それにしてもメニューが多いのはいただけない。
食券を買うのに迷う客が多発して並んでいるこちらは無駄な時間が発生する。
彬自身は毎日決まって日替わり定食。考える時間が省けるし、栄養のバランスが自動的に調整される。
「よう、藤堂」
カニクリームコロッケ、ごぼうサラダ、ピクルスとパンが並んだ盆を持って、窓際の席に座ると同時に声をかけられる。同じように盆を持った三橋がいた。
「俺も今から飯なんだ。ここいい?」
そして彬が返事をする前に向かいの席に腰を下ろした。
三橋の向こう側で看護師と思われるふたり組がこちらを見て、ひそひそと囁き合っている。くすくす笑っているのは、"ヒューマロイドが食事をしている"と冗談でも言っているのだろうか。
手を合わせて食べはじめると、三橋が身を乗り出した。
「で? どうよ、どうよ。可愛い妻との新婚生活は」
予想通りの問いかけに、彬は「べつにどうもこうもない」と答えた。
「そんなわけないだろ。新婚一週間なんだから。あー! まさかお前に先を越されるとは思わなかったなー。悔しいけどそれ以上に面白いから許す」
なぜ俺の結婚にお前の許しがいるのだ、と思いながら食べ続ける。無駄な言葉には答えないことにしている。
「見合いから一カ月で結婚なんて、思い切ったなあ。でも式も新婚旅行もなしなんて奥さんは納得したん?」
「もちろんだ」
もとより、通常の夫婦ではないのだ。いずれ離婚するのだからお披露目は不要だし、彼女が行きたがっているのは、自分との旅行ではない。
見合いから一カ月で届けを出し同居を始めたのは、とにかく早く家を出たい、という藍の希望に沿ってのことだ。
彼女の手術は、主治医はなるべく早く行いたいようで遅くても二年以内に、と言われている。