藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 あれこれ言い合っていると、突然弥に遮られる。
 ふたりして彼を見ると、どうしたことか青ざめている。
「その人は信用できる人なの……? 形だけとはいえ夫婦として一緒に住んでて、あ、危なくないの……?」
 まるでこの世の終わりのような感じだ。ちょっと大袈裟だが、これは彼としてはいつものことだった。
 親友ふたりの藍に対する考えは真逆。
 陽菜はいっちゃえやっちゃえのタイプだが、弥は超がつくほど心配性なのだ。
 陽菜が肩をすくめた。
「相変わらずだね、弥は。その人藍パパ推薦のお医者さんなんだよ。藍ラブのパパが変な人と見合いさせるわけないでしょ」
 楽観的な陽菜の意見に、弥は納得しなかった。
「変な人じゃないとそんなこと提案しないよ……!」
 そう言われればそうかもしれない。
 それでも藍は信用できると思ったのだし、見合いの日から今日まで彼は決めたことを守ってくれている。
「わっくんが心配してくれるのはありがたいけど、大丈夫だよ。信用できる人だから」
「藍ちゃんはドクターという人たちを知らないからそう言うんだよ。僕は仕事柄ドクターのことはふたりよりは知ってるつもりだ。僕からしたらドクターは信用できないよ。そりゃもちろん社長のことは信頼しているけど」
 弥は、大須賀製薬でMRをしている。
「へえ、ドクターが……。なにがどう信用できないの?」
 陽菜からの問いかけに、彼は眉を寄せた。
「ドクターはとにかく女関係が派手なんだ。モテるから仕方ないとはいえ、既婚未婚問わずめちゃくちゃだよ。僕の同僚の女性もドクターと関係を持った人が何人もいるんだから。藍ちゃんの相手もどういうつもりかわからないよ。どこのなんて人?」
「そういえば言ってなかったね。白川医科大の藤堂さん」
「白川医科大の藤堂……聞いたことあるような」
 弥が難しい表情になった。
「プロジェクトの関係でお父さんと話をしたって言ってた」
「プロジェクト、ああ、あれか」
 心当たりはあるが、弥は関わっていないらしい。
「わっくん、心配してくれてありがとう。でも大丈夫。彬さんは女性関係は皆無なんだって。女の人に興味がないみたい」
 とりなすように藍が言うと、弥が「な、名前呼び⁉︎」と声をあげる。
「え? ……うん、お父さんの前では夫婦のふりをしなきゃダメだから」
 藤堂からの指示だ。
 本当の夫でもないのにとはじめは抵抗があったが、戸籍の上ではすでに藍も藤堂なのだから仕方がない。
 沈黙してしまった弥に代わり陽菜が口を開く。
「で? どんな人なの? 写真ある?」
 藍はスマホを出し両家で食事をした際にふたりで撮った写真を見せる。
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