藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
「野菜の皮剥きは、苦手なんだな?」
「どうでしょう? はじめてなので、よくわかりません」
「……皮剥きが?」
「いえ料理がです」
 あっけらかんとして言うその内容に唖然とする。
 確かに料理をマスターしたいとは言っていたが、まさかまったくの初心者とは。
 ——料理がはじめてなら、じゃがいも皮剥きは包丁ではなくピーラーを使うべきだ。いや、その知識もないのか? そもそもはじめてだとしたら、シチューは……どうなんだ?
 さまざまな疑問が頭に浮かぶ。自分には関係ない話だと思うが根っからの研究肌の彬にとて疑問は放っておけないのだ。
「……レシピはあるのか」
 彬が知らないだけで、初心者でもすぐにできるシチューのレシピが存在するのかもしれない。いやそうに違いない。
 それさえ確認すればスッキリすると思ったのだが「これです」と言われて差し出された本は、明らかに上級者向けだった。
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