藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
おかしなふたり

小さな変化

 発熱した次の週、藍はボランティアに復帰した。
 書架の間を本が並ぶカートを押していると名前を呼ばれる。
「藍ちゃん、藍ちゃん」
 振り返ると、意外な人物がそこにいた。
「わっくん、……え、どうしたの?」
 弥と顔を合わせるのは家に招いた時以来だ。普段はしょっちゅうたわいもないことでメッセージが来るのだが、ここのところはどうしてかご無沙汰だった。
 忙しいのだろうかと気にはしていたが、藍の方もあれこれと忙しくて正直それどころではなかった。
「仕事で白川医科大に行くんでちょっと寄ってみた。今日は藍ちゃんがいてる日だったなーと思って」
 寄ってみたと彼は言うが、駅からの動線で考えたら、どう考えても回り道だ。それだけ心配をかけていたのだろう。
「すごいね、頑張ってるってさっきはるちゃんからも聞いたよ」
 褒められて嬉しくなってふふふと笑う。これくらいでとは思うけれど、そもそもすべてのことをいい方向に解釈するようにしている。
「ベテランさんからも、仕事が丁寧って言われてるのよ」
「本が好きな藍ちゃんにぴったりの仕事だね」
「でしょ? 天職だと思う」
 小さな声で話しながら、ほっとする。
 最後に会った日はなんだか元気がなかったし、その後連絡がなかったから、何かあったのかと思ったが、思い過ごしのようだ。
「それから……藍ちゃん、その……藤堂先生の方はどう?」
 思いがけないことを聞かれて、ドキッとする。
「ど、どう……って、なにが……?」
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