その黒曜 番外編
文化祭編
私立鳳(おおとり)学園が一年で最も活気づく日、それが秋の文化祭だった
校内は色とりどりの装飾で彩られ、出店の香ばしい匂いと、生徒たちの賑やかな笑い声が満ちている
そんなお祭り騒ぎの中、生徒会室だけは、まるで別世界のような静けさと、書類の山に包まれていた
「九条会長、お疲れ様です。こちら、現在の中庭ステージ周辺の動員データと、機材トラブルのファクト報告書です。今のところ、他校からの侵入者も含めて重大な規律違反はありません」
情報係に任命された1年の高橋多久が、一ノ瀬直伝のメモ帳をギューッと胸の前に抱え込みながら、緊張した面持ちで報告を入れる
デスクに座る九条 澪は、乱れのない美しい黒髪をサラリと揺らし、校則通りの綺麗な笑顔で顔を上げた
ノーメイクなのに圧倒的に美しい大和撫子の姿だ
「ありがとうございます、多久君。あなたのデータ収集はいつも正確で、本当に助かりますよ。さあ、そこへ座って温かいお茶でもどうぞ」
「い、いえ! 俺はまだ次の見回りがありますので! 失礼します!」
最狂の総長から優しく微笑みかけられ、多久は顔を真っ赤にして、逃げるように生徒会室を飛び出していった
それを見送った一ノ瀬刹那が、きっちり上まで留めた制服の襟を正しながら、スマートに手帳を閉じる。
「多久君も、随分と使い物になるようになってきましたね。レイさん、表の巡回スケジュールですが、ここからの2時間は私が本部を預かります。あなたは少し、息抜きをしてきてください。これは参謀としての業務命令です」
「ふふ、一ノ瀬君にそう言われては、従うしかありませんね。では、お言葉に甘えて」
澪が席を立ち、ブレザーのシワを優雅に伸ばした、その時
ガラリと音を立ててドアが開き、購買の焼きそばパンを口にくわえた三浦颯太がひょっこり顔を出した
ネクタイはいつものように緩み、ブレザーのボタンは全開だ。
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