その黒曜 番外編
「お、レイさ……じゃなくて九条会長、やっとお仕事終わり? 一ノ瀬、ナイス。じゃあさ、会長の息抜きの相手、俺が立候補しちゃおっかな〜」

「三浦副会長、うるさいですよ。……それに、そのだらしない着こなし、生徒の模範となるべき役員としていかがなものかと思います」

澪は冷たくあしらうような敬語を使いながらも、自然な動作で颯太の前に歩み寄り、手慣れた手つきで彼の緩んだネクタイをキュッと綺麗に直してあげる

「もー、相変わらず手厳しいねぇ。でもありがと」

颯太は前髪をクシャッと掻き上げながら、いつもの軽いタメ口で、嬉しそうに澪の隣に並んだ

一ノ瀬がメガネの奥の目をピキッと怒らせ、

「……三浦、会長に無礼な真似をしたら、来月の予算編成を地獄にしますからね」

と冷酷に言い放つが、颯太は

「はいはい、お留守番よろしく〜」

とヘラヘラ笑って澪を連れ出した

賑やかな廊下に出ると、周りの一般生徒たちから一斉に視線が集まる

「あ、九条会長だ!」

「三浦先輩、今日もマジ格好いいな……」

誰もが憧れる、鳳学園のトップ2

「ねえ、何から食べる? 中庭のたこ焼き、結構美味いらしいよ。あ、それともお嬢様の口には合わない?」

「失礼ですね、三浦君。私はたこ焼きも、お好み焼きも大好きですよ。フランクフルトも気になりますね」

学校では「三浦君」と呼び、丁寧な敬語を崩さない澪

だけど、その距離感は他の誰よりも近い。2人が屋台を回りながら、颯太が買ったチョコバナナを「ほら、一口あげる」とチャラく差し出し、

澪が「……はしたないですよ」と言いながらも、少し恥ずかしそうに小さく口を動かすような、甘酸っぱい時間が流れていた


――しかし、鳳の文化祭が、ただの平和なイベントで終わるはずがなかった。
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