その黒曜 番外編
ひと夏の残響編
文化祭の大成功から数日後の週末。
深夜2時、静まり返った海岸沿いのバイパスを、5台の漆黒の単車が地鳴りのような爆音を響かせて駆け抜けていた
先頭を走るのは、もちろん総長・レイ。ブレザーをマントのように羽織り、艶やかな黒髪を夜風に激しくなびかせている
その後ろを、副総長の三浦颯太、そして幹部の一ノ瀬刹那、千堂蓮、鳴海陸がぴたりと追従し、最後尾には一ノ瀬のタンデムシートにしがみついた多久が、涙目で絶叫していた
「ひ、ひぃぃぃっ! 一ノ瀬先輩、スピード出すぎですぅぅ!!」
「騒がしいですよ、多久君。これしきの速度、黒曜の移動としては日常茶飯事です。舌を噛まないように噛み締めていなさい」
眼鏡を外し、冷徹な目を剥き出しにした一ノ瀬が冷酷にアクセルをさらに開ける
やがて、5台の単車は誰もいない真っ暗な砂浜の駐車場へと滑り込んだ
エンジンが止まると、あたりには心地よい波の音だけが広がる
「よっしゃぁぁぁ! 海だぁぁぁ!!」
バイクを降りるなり、シルバーウルフの髪をクシャッと掻きむしった蓮が、制服の黒パーカーを脱ぎ捨てて砂浜へと走り出した
「蓮くん待ってよ〜! 俺の限定スニーカー、砂が入らないように脱がなきゃ!」
陸もミルクティーベージュのパーマ頭を揺らしながら、慌てて靴を脱いで後を追う
「ふぅー、最高の夜風じゃん。レイさん、クラッチの調子どうだった? 俺の調整、完璧でしょ?」
颯太が頭の後ろで手を組みながら、いつもの調子でレイの隣に並ぶ
レイは首元の黒い革製チョーカーに細い指先でそっと触れ、ふっとに微笑んだ
「ええ、完璧でしたよ、颯太君。あなたの運転と同様、とても心地よかったです」
「光栄でーす。……って、おい、あいつら何やってんの? 笑」
颯太が砂浜を指差すと、そこでは蓮と陸が、まるで小学生のように波打ち際で激しい水の掛け合いを始めていた
「オラァ陸! 冷てえだろ!!」
「うわ、蓮くんマジ野蛮! 一ノ瀬先輩、蓮くんが暴れてまーす!」