その黒曜 番外編
衣服の擦れる綺麗な音。

澪は最初の一人が振り下ろした鉄パイプを、右手の最小限の動きで受け流すと、そのまま相手の懐に鋭く踏み込んだ

美しい所作のまま、掌底を敵の顎の下から叩き込む

ドン!と重い音がして、不良は白目を剥いて一撃でコンクリートの床に沈んだ

「ひっ……!?」

残りの4人が恐怖で硬直する。

澪は一分の隙も見せず、ドレスを纏って舞うかのように軽やかに躍動し、流れるような体術でわずか数十秒のうちに全員の関節を極め、鳩尾を打ち抜いて地べたに這いつくばらせた

傷一つ、衣服の乱れすら一つもない、完璧なる圧倒。

「謝罪は不要です。あなたが差し出すべきは言葉ではなく、相応のケジメですので。……看板もプライドも失った操り人形の残党が、」

レイとしての冷酷な眼光で見下ろすと、不良たちは「ひ、ひぃぃぃっ!」と悲鳴を上げて、這うようにして一目散に逃げ去っていった

「怪我はありませんでしたか? さあ、もう大丈夫ですよ」

澪はすぐにいつもの優しい「ミオさん」の笑顔に戻り、怯える一般生徒を助け起こした

生徒が「あ、ありがとうございます……!」と何度も頭を下げて去っていく

裏庭に、再び文化祭の遠い喧騒が戻ってきた

颯太は髪をクシャッと掻きながら、机に寄りかかって笑った。

「いや〜、相変わらず容赦ないね、レイさん。せっかくのデートなのに、変なゴミが混ざっちゃって残念だったわ」

「デートではありません、巡回です。……でも、少しすっといたしましたね、颯太君」

澪はふふ、と妖艶に唇を緩めると、人差し指を自分の唇に当て、小さくウインクをしてみせた

「学校では私はお淑やかな会長。この裏庭での出来事は、二人だけの内緒にしてくださいね?」

「了解。俺だけの秘密、ね」

颯太はチャラく笑いながらも、その瞳には、自分の唯一無二の相棒への絶対的な愛着と信頼が満ちていた。表のステージは、何事もなかったかのように再び賑やかなお囃子を響かせていた


〜fin〜
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