キミが家族になった、その日から。
文化祭の最後を飾る後夜祭。
そして夕方。
校庭の真ん中では、大きなキャンプファイヤーが燃えていた。音楽が流れ、生徒たちは楽しそうに手を取り合って踊っている。
「好きな人と踊ると結ばれるらしいよ!」
──誰かがそう叫ぶと、あちこちで歓声が上がった。
夏音は少し離れた場所から炎を見つめる。
すると、隣に人影が立った。
「ここにいた。」
涼だった。
二人は並んで炎を見つめる。
「楽しかった?」
涼が尋ねる。
「うん……涼は?」
「まあ、それなり。」
相変わらず素直じゃない返事に、夏音は小さく笑う。その笑顔を見て、涼も少しだけ口元を緩めた。
───ふと風が吹く。
炎の向こうでは、恋人たちが手をつないで踊っていた。夏音はそっと目を伏せる。
私たちはあそこへは行けない…好き同士でも、そうじゃなくても。“家族”だから…あの日の約束があるから。
それでも、隣にいるだけで幸せだと思ってしまう。
その気持ちは、もう止められなかった。
一方の涼もまた、胸の奥で同じ想いを抱えていた。
好きになるなって言ったのは俺なのに…約束を作ったくせに、1番約束を破りそうなのは俺じゃねぇかよ……。
──燃え上がる炎が、二人の横顔を優しく照らす。近くにいるのに、触れられない。
手を伸ばせば届く距離なのに、その一歩がどうしても踏み出せない。
文化祭の夜は、2人の秋は……二人の恋を静かに前へ進めながら、切ない余韻だけを残して終わっていった──