結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 フロア奥にある執務室にむかう紀代子のあとを透子はついていく。人はいないのにわざわざ場所を変えるのは、よほど込み入った話をしたいからだろう。

 執務室はたくさんの花やアートが飾られている、紀代子に似あう華やかな空間だった。

 ソファーに腰掛けた紀代子にならって、透子も向かい側に座る。

「とある大企業の社長を、結婚させたいの」

 すぐに話を切り出され、透子は軽く身を乗り出した。

「大企業の社長……ということは、『ヴェールプラン』でしょうか」

 マリアージュ・アクシアには、一般的なプランとは別にセレブ向きの特別枠がある。

 ヴェールプランと呼ばれるその制度は、結婚相手を探す富裕層に特化したもので、大物政治家や大企業の子息や令嬢、著名な実業家、有名芸能人や資産家などが対象だ。情報管理は徹底され、マッチングは基本的に自社内で完結する。

 入会は紹介を基本とし、審査基準も厳格。選ばれた者だけが利用できる、限定的なサービス。その存在自体公にしていない。いわば〝裏のプラン〟。利用料金は高額だが、セレブたちの口コミで利用者は増えている。

「えぇ、ヴェールになるわ。透子も知ってるわよね。『MSB』」
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