結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
「えっ、MSBの社長さんなんですか?」

 母の口から超有名企業名が飛び出し、透子は思わず声を上げた。

 MSBは、国内では知らない人がいない伝統ある化粧品メーカーだ。老舗でありながら、最新鋭の研究技術を誇っており、ドラッグストアで手に取れる身近なものから、百貨店に並ぶ高級ラインまで幅広くの商品を展開している。透子が愛用しているスキンケアラインやファンデーションもMSBの製品だ。

「社長といっても、まだお若いの。一年半前に前社長が急に亡くなられて、息子さんが後を継いだのよ」

「なるほど。それで、そろそろ身を固めたいと思い立ったんですね」

 有名企業の社長がそれなりの家柄や地位のある女性を求め、セレブ特化型プランで婚活するつもりなのだ。

「ただ、ちょっと今回は特殊で、ご本人ではなく、彼のお母様がヴェールの噂を聞いたらしくって、どうしてもって頼みこまれたのよ」

「そうですか。親御さんに勧められて入られる方も多くいらっしゃいますしね」

「まだカウンセリングもしていないの。それで、透子。彼を担当してもらえないかしら」

「私が、ですか」
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