結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 ヴェールプランは秘匿性が高く、様々な配慮が必要なことから対応できるカウンセラーは限られている。これまでは母を中心に、一部のベテランが対応してきた。

 自分にはまだ早いのではないか。そんな思いが頭をよぎる。

「あなたも、もう入社六年目でしょ。お客様からの評判もすごくいいし、成婚率も高いじゃない。そろそろこっちも任せてみたいのよ」

 迷いを察したのか、紀代子は諭すように続けた。

 透子は軽く息をつく。この人に期待されている以上、〝自信がない〟では断れない。それに、挑戦してみたいという気持ちも確かにあった。

「わかりました。やってみます」

「困ったら私もフォローに入るわ。よろしくね」

 はっきり答えると、紀代子は満足げにうなずいた。

「詳しい話は改めてするわ。さあ、仕事はもう終わり。帰りましょ。それにしても、仕事をさせてる私が言うのもなんだけど、毎日遅くまで残ってるってことはデートする彼氏もいないのね」

 紀代子は立ち上がり、バッグを肩に掛けながら母親として話しかけてきた。

「お察しの通り、相変わらずいないわよ」

 仕事は終わったと判断し、透子も娘に戻って答える。
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