難攻不落な御曹司の独占欲と愛に蕩される
「…」
顎に手を当て、考える素振りをする姿が様になり、長い指が男らしく、ときめいてしまう。
「…庭園で」
「…さっきの子だね。ただ、一服しに行くのに邪魔だっただけだけど、助けられたのならよかったよ」
すぐに思い出してもらえなかったことが、少し悲しかった。
「はい。偶然だったにしても、おかげで捕まらずにすんだので、お礼を伝えたくて伺いました」
「そう。それじゃ、用事は済んだようだね。失礼するよ」
「待ってください」
立ちあがろうとする彼を引き止めた。
「…」
「あの、お名前伺ってもよろしいですか?」
先程、庭園で名前を知ることができたが、本人からの自己紹介無しに、名前を呼ぶのは失礼だと思ったのと、彼を引き止め会話に繋げたかった。
「…ごめんね」
作り笑顔で、拒否されたようだ。
立ち上がって、背を向け会場へ戻っていく。
男性を引き止めたいと思ったことも、本人の口から名前を知りたいと思ったことも、人に拒否られたことも初めての経験で、初めての恋に、どうしていいかわからず俯いて涙を流していた。
そこへ、どさっと乱暴に座る人影が足先に見えて、彼が戻ってきたのかと顔をあげたのだが、彼とよく似た方の男だった。