君と迎えるクランクアップ

クランクアップのその後で

数日後。ドラマの打ち上げも終わり、世間では『あなたのイチバンになりたくて。』の最終回が大きな感動とともに放送されていた。



夜遅く、早乙女優愛のマンションの一室。



テレビ画面には、あの学園のセットで甘く切なくキスをするドラマのワンシーンが流れている。



だが、そのリビングのソファに座っているふたりは、もうカメラの向こう側の住人ではない。



制服を脱ぎ捨て、リラックスした部屋着姿の、ただの「恋人同士」だった。



「ねえ、これ何度目だっけ?」



ソファにもたれかかりながら、優愛がテレビ画面を指さして笑う。



「知らねぇよ。お前が何回も録画で見直すからだろ」



塁は呆れたように言いつつ、手元のマグカップからコーヒーを一口飲んだ。



「だってみんな、『最高のカップル誕生!』ってネットでも大騒ぎなんだもん。あながち間違いじゃないけどさ」



優愛はふっと笑うと、塁の膝の上にコテンと頭をもたれかけさせた。



その柔らかい髪の香りが、ふわりと鼻腔をくすぐる。



「おい、重いぞ」



「嘘つき。さっきからずっと私の顔見てたクセに」



図星を突かれ、塁はわずかに言葉に詰まった。



「……これから大変だぞ。お前は大人気女優で、俺は専属マネージャーなんだからな。世間にバレたら面倒だぞ」



「ふん、そんなの気にしないで~。私を一番近くで支えるって決めたのは塁でしょ?」



優愛は体を起こすと、塁の胸に両手を添え、ふっと艶やかな笑みを浮かべた。



「それに……ドラマはクランクアップしたけど、私たちの本当の物語は、まだ始まったばかりなんだから」



「……そうだな」



観念したように、塁は優愛の腰に手を回し、その引き寄せた唇にそっと自分のそれを重ねた。



ドラマの台本にはない、リテイクなしの最高のキス。



スポットライトの裏側ではなく、ふたりだけの温かい光の中で、ふたりの恋は永遠のクランクアップを迎えた――。


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