終わらない夜に
4.きらめく、スピカ
お腹の中の子供が双子だと発覚したのは、この島に来て少ししてからだった。
近所の人たちは『苦労も二倍だけど楽しみも二倍だね』なんて声をかけてくれた。
けれど、自分が子供ふたりの親になんてなれるのだろうかと不安が押し寄せる夜もあった。
そのたび、家の窓から夜空を見上げて星を眺めた。
ライトの少ないこの島は、星あかりがよく見える。
空に散らばる小さな星、ひとつひとつに彼との日々を思い出し、切なくも希望を与えてくれた。
「ん……」
目を覚ますと、寝室には私ひとりしかいなかった。
時計を見ると時刻は朝六時半。
毎朝起きるのはこの時間で、目覚ましが鳴る前に目が覚めるくらいには習慣づいた。
雪人と冬馬は……向こうの部屋か。
体を起こしてあくびをしながら、自分の布団をたたんで寝室を出た。
この島に来てその日すぐに決めた家は、築六十年の古民家。
庭付きの平屋建て、4LDKの広々とした作りで、子供たちが成長しても音や声が気になりにくいのが決め手だった。
古民家といってもよく管理されていてきれいだし、柱の傷や落書きなど、誰かが育ってきた場所という雰囲気にどこか落ち着きも覚える。
台風が来ると家全体がガタガタ揺れるのだけがちょっと怖いけど。
「雪人、冬馬ー?起きてるー?」
寝癖を手ぐしで整えて家の中を歩いていると、裏庭からなにやら声が聞こえてくる。
子供たちは時々早起きをして、裏庭の木々に水をあげてくれている。我が子ながら優しいいい子だ、と思いながら裏庭へ行く。
「くらえーっ! みずこうげきだ!」
「うわぁ! やられたー! だがしかし……魔王も水攻撃でやり返すぞ!」
「わー! つめたいー!」
そこには木々に水やりをしている……というよりも。
ホースやじょうろで水をかけ合い、びしょびしょになってはしゃぐ子供たちと名執さんがいた。
「……なにしてるんですか」
「あ、つぐみおはよ。子供たちが水やりするっていうから一緒にやってたんだけど」
名執さんは昨夜コンビニで買ってきた寝巻きを、びっしょりと濡らした姿で笑う。
「びしょびしょじゃないですか!タオル持ってきますから待っててください」
「ままー、ゆきともたおるぅ」
「わかったからその状態で家に上がらないの」
タオルを手に取り戻ると、名執さんは自分より先に冬馬を拭いてくれる。
子育てなど縁がなかったであろう彼が子供を優先して動く姿に、私は雪人の髪を拭きながら少し感心した。