終わらない夜に
5.光
『俺の人生が奪われるならそれでいい。全部全部、つぐみとあの子たちに捧ぐよ』
名執さんの真っ直ぐな言葉がうれしくて、また夢を見る。
彼と子供たちと、4人で家族になれるんじゃないかって。
だけどそのたび、あの日の自分の母の姿や、名執さんのお母さんの言葉を思い出してしまう。
私は彼につり合わない。
ふさわしくない。
きっと、彼を不幸にしてしまう。
「雪人、いい加減に起きなさい!」
ほんの少し暑さの和らいだ、金曜日の朝。
いつまでも布団から出てこない雪人を、私は大声で叩き起こす。
冬馬はとっくに朝食を食べ始めているというのに……雪人はどうも朝が苦手みたいだ。
この前名執さんがいたときは早起きしてたくせに。
「やだぁ、まだねむいぃ」
「ダメ。保育園遅刻しちゃうよ」
「ほいくえんいかないぃー!」
「それはもっとダメ!ママは仕事あるんだから!」
名執さんが水曜の朝に東京に戻ってから、わずか二日。
名執さんの前ではしっかりしていた雪人も、すっかりいつもの調子で駄々っ子だ。
ああ見えて名執さんの前ではちょっとかっこつけてたんだな……。
子供なりのプライドというか、自尊心を感じて感心してしまうけれど、このままでは私も遅刻してしまう。
「雪人、わがまま言わないで。今日の晩ごはんは雪人の好きなハンバーグ作ってあげるから」
「や!」
ハンバーグでもダメか。どうしたものかと布団に張り付く雪人の背中をポンポンと撫でていると、雪人はおもむろに顔を上げて私を見た。
「……はんばぁぐより、あおいがいい。あおいとならほいくえんいく」
それはつまり、名執さんに会いたいということなのだろう。本当に名執さんのことが大好きなんだ。
今日会いに来るのは無理だろうけど、この時間だしちょっと電話するくらいならできるかな。
「じゃあ電話してみる? 出るかはわからないけど」
「でんわ!?いーの!?」
取り出したスマートフォンの連絡先から、【名執蒼】の名前を探して電話をかける。
この前の一件で連絡先を交換しておいてよかった。
でもこうして電話をするのも四年ぶりだ。なんだか少し緊張してしまう。
少しの呼び出し音のあと、電話に出る音がする。
『もしもし?つぐみ?』
電話越しの声は朝だからかいつもより少し低く、ややかすれている。
その声がした途端、スピーカーで聞いていた雪人は勢いよく飛び起きるとスマートフォンを掴んだ。
「あおいー!」
『雪人か。おはよう』
その声に雪人からの電話だと察してくれたようで、名執さんの声が少し高くなる。
「すみません朝から。雪人がなかなか起きなくて、名執さんとだったら保育園行くとか言い出してて……」
『そういうことか。こら雪人、朝からママを困らせない』
「だってぇ、あおいにあいたいんだもんー!」
雪人はスマートフォンに向かって大きな声で叫ぶ。