白い結婚で捨てられた王妃は、「あなたのために王になります」と言った義弟の手を取る

06. ずっと見ていてくれたひと

「!」

 突然のレオンハルトの行動に、セレスティーヌは戸惑った。
 セレスティーヌの手を取ったレオンハルトが、こちらを見上げる。

「義姉上。いえ、セレスティーヌ。――愛しています。結婚してください。これから王となる私を、あなたに支えてほしいのです」

 青い瞳がまっすぐにセレスティーヌを見つめている。セレスティーヌは苦笑した。
 レオンはまだ十代。これからの人間だ。しかも一国の王。いくら白い結婚だったとはいえ、前王に離縁された自分がその手をとるわけにはいかない。
 セレスティーヌは困ったように微笑んだ。

「わたくしを妃にしなくても、アルヴェリアは条約を結び直すわよ。あなたが国王になるんだもの」
「条約目当てではありません! ずっとずっと私は、あなたのことをお慕いしていたのです。――どうか、私の手を取ってください。セレスティーヌ」

 レオンハルトは真摯なまなざしでセレスティーヌを見つめる。その瞳に宿る熱にセレスティーヌは気づいた。

「わたくし、は――」

 セレスティーヌの視線が揺れたのに気づいたのだろう。
 たたみかけるように、レオンハルトが言った。

「僕は、あなたのために王になったのです」

 いつの間にか、レオンハルトの一人称は普段のものにかわっていた。
 はっとセレスティーヌは息を呑む。
 クラウスから側妃降格を言い渡されたあの日、レオンハルトから聞いた言葉。――あなたのため、あなたを守るために王になります。
 セレスティーヌは茶色の瞳を丸くした。

「もしかして、本気だったの?」
「僕は最初から冗談を言ったつもりはありませんが?」

 レオンハルトが拗ねたように軽く唇を尖らせる。


 
< 13 / 15 >

この作品をシェア

pagetop