消して、奪って、きみだけを
何だか唐突に心細さを感じて、ぽつんと佇むわたしの孤独感が際立った気がした。
当たり前のようにそばにいてくれたはずの叶人くんもいなければ、日和もいない。
涼は美怜ちゃんの手伝いに行っているし、いまのわたしはひとりぼっち。
その上で選ばなくちゃいけないんだ。
好きな人か、友だちか。
◇
スピーカーを通した楽しそうな声と盛り上がる歓声、それから流行りの曲がBGMみたいに遠くから聞こえてくる。
文化祭を明日に控えた今日は前日祭。
賑やかな喧騒は、中庭に設置されたステージから響いてくるものだろう。
日暮れ間近だけれど、まだ多くの生徒が学校に残っていた。
前日祭を楽しんでいる人もいれば、わたしみたいに教室で準備に追われている人もいる。
追われていると言ってももう最終段階の仕上げだ。
内装は完成していたのだけれど、ふざけてはしゃいだクラスメートがぶつかって一部が壊れてしまった。
その修復作業中に前日祭のステージが始まって、みんなそちらへ行ってしまったのだった。
涼は美怜ちゃんに連れられ、叶人くんは日和に連れられ、教室にはわたし以外に誰もいない。
剥がれてしまったセロファンを貼り直しながら、もやもやと燻る感情を自覚する。
(叶人くん……)
この間の買い出しのときと同じだった。
本当は日和と行って欲しくなかったのに、わたしが止める理由もなくて見送るしかなかった。
ちょっと見てくるね、と彼は声をかけてくれたけれど、気にかけてくれるのがいまは逆に辛い。
もうこの気持ちも捨てなきゃいけないのに、優しくされるたびに揺れてしまう。
どうせ失うならいっそ手が届かないほど遠い存在になってくれたらいいのに、期待を捨てきれない中途半端なわたしはまた勘違いしそうになる。
そもそもがきっと夢だったんだ。
初恋の人と再会したことも、それから過ごした甘い時間も。
そばにいてくれることが当たり前になりすぎて、いつの間にか随分と傲慢になっていた。
(あの頃だってそうだ……)
叶人くんと毎日のように一緒に過ごして、それが当たり前だったはずなのに、その日常は突如として崩れ去った。
また、あんなふうに“当たり前”が崩れようとしている。
頼りなくて自分の気持ちすらはっきり示せないわたしに、きっと愛想を尽かして日和のもとへ行ってしまう。
また、彼がいなくなる。
そんな秒読みが既に始まっているような気がした。
どうしていままで返事をできずにいたんだろう。
こんなことなら、言い訳なんてしていないで伝えればよかった。
もっと早く、自分の気持ちに気づけていたら────。
そんなことを考えたとき、ガラ、と教室の扉が開いた。
はっとして振り向くと、そこにいたのは叶人くんだった。
「叶人くん……?」