消して、奪って、きみだけを

 いままでに聞いたどれよりも甘い声で告げられ、瞬きひとつ忘れてその瞳から逸らせなくなる。

 ゆっくりと顔を近づけ、傾けた彼と唇が重なった。

「……っ」

 窓際のステンドグラス越しに夕日が射し込んで、あたたかい光に満ちていく。

 加速して止まない鼓動にも痺れるような頬の熱にも、あとから遅れて気がついた。
 息すらできずに固まるわたしに、くすりと笑った叶人くんが言う。

「困らせたくないのは本心だけど……ごめんね、これ以上は待てそうもなくて。羽衣の答えが聞きたいな」

「き、キスしてから聞くなんて……ずるい。分かっててしたんだよね?」

 いっそう頬が染まっているにちがいないけれど、それは夕日のせい。
 そう言い聞かせなければとても彼の顔なんて見られない。

 叶人くんは頷く代わりにいっそう笑みを深めた。

「ずっと羽衣だけを見てきたから。本当……そのかわいい表情(かお)は僕の前だけにしてね?」

 添えられた彼の親指が愛しそうに頬を撫で、わたしはとっさにその手を掴んでいた。
 温もりが消えるのが惜しくて、離れていかないように。

「羽衣?」

「わたし、も……」

 意外そうに目を見張る叶人くんをまっすぐ見つめる。

 やっぱり、自分の気持ちに嘘はつけない。
 どんなに諦めようとしても少しも冷めなかったこの想いから、逃れることだってもう手遅れだ。

「わたしも……叶人くんが好き」

 照れくささに押し負けそうになりながらも、隠しきれない本音を言葉にした。

 伝えられるときに伝えなかったことであんなにも辛い思いをしたから、今度は後悔したくなくて。

 一瞬、はっとしたように瞳を揺らがせた叶人くんは噛み締めるように頬を綻ばせる。
 次の瞬間には再び唇が触れていた。

「ちょ、っと……」

 心臓が壊れそうなくらい暴れて、たまらず抵抗してみても何か言う前に唇を塞がれてしまう。
 桜の花びらみたいだった薄い感触は、繰り返すほど滑らかになっていって息が切れる。

「か、叶人くん……!」

 ようやく隙を見つけて呼ぶと、ふわりと抱き締められる。
 鼻先を掠めて漂った甘やかな香りに酔いしれそうになった。

「……うれしい。やっと聞けた」

 素直にこぼされたひとことを聞いて、自分がどれだけ彼を不安にさせていたのかを思い知る。

 ずっと余裕があるように見えていたけれど、それもわたしへの優しさだったのかもしれない。

 おずおずとその背中に触れると、腕を緩めた叶人くんがわたしの左手を取った。
 指を絡めるようにして握られる。

「きみの居場所はここだけだからね、あの頃からずっと。言ったでしょ? 離してなんかあげない……絶対に」

 ぎゅ、と力を込め、恍惚(こうこつ)と彼は微笑む。
 ブレスレットが夕日を弾いてきらめいた。

「羽衣には、僕がいれば十分だよね?」
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