消して、奪って、きみだけを
「だって……不安で。僕はいまでも羽衣の一番になれてるのかな」
その寂しそうに揺れた瞳が、以前カフェで見たそれと重なってはっとする。
────篠崎くんが羨ましいよ。
もしかして、今日もわたしと涼のことを見て不安にさせてしまったのだろうか。
どんなに距離を縮めても、7年という時間の空白は変わらない。
その空白のページを埋めているのが涼だから、気に留めるなという方がきっと無理な話だろう。
「それに、あの変な先輩たちにも手を掴まれて。……本当、ノイズばっかりだ」
ぎゅう、とわたしも繋いだ手に強く力を込めると、叶人くんははっと顔を上げた。
不安定に見える目を見てそっと笑う。
「……やきもち?」
そう尋ねると、彼の瞳がまた揺らいだ。
言葉を探してから、結局困ったように眉を寄せてわたしを見返す。
「……だめ? こんな僕、嫌いになった?」
きまりが悪いといった様子で余裕のない表情も、照れたように色づいた頬も、何だかいつになくかわいらしくて笑ってしまう。
「どうして笑うの?」
「ううん、ごめんね。……何か、うれしくて」
こんないじらしいような健気な一面も、きっとわたししか知らない。
そのことがくすぐったくてうれしい。
「嫌いになんてなるわけないよ。こんなに好きなのに────」
はっとして慌てて口を覆うけれど、既に手遅れだった。
わたしを見つめる叶人くんの瞳がひらめき、熱を帯びたかと思うと唇が弧を描く。
「もう1回言って?」
そこまで素直に言うつもりなんてなかったのに、調子を乱されて口が滑った。
期待を込めた様子で顔を傾けられるけれど、わたしは真っ赤になってしまいながら首を横に振る。
「い、言えない……」
「聞きたいのに残念だなぁ。じゃあ代わりにこのまま、手離さないでね」
すっかり元の調子に戻った叶人くんは、そう言って甘く微笑む。
やっぱり彼には敵わない。
どきどきとおさまらない鼓動が直接耳元に響いてくるような錯覚を覚えて、改めてそう思った。
手芸部の物販を見にいくと、色々なハンドメイドのアクセサリーや小物が並んでいた。
その一角に押し花のしおりを見つけて思わず手に取る。
「あ……」
記憶を封じ込めた箱に絡まっていた糸が、ふいにまた1本ほどけていった。
『叶人くん、誕生日に何がほしい?』
桜が咲き始めた春先の頃、わたしは彼にそう尋ねた。
小鳥のお墓ができてから半年近くの時が流れていたけれど、彼が周囲と打ち解けることはなかった。
ただわたしと過ごす時間が増えていくばかりで、その頃にはもう一緒にいることが当たり前になっていた。