消して、奪って、きみだけを
思わぬ言葉に驚くわたしを見据える日和の目からは、言葉通り軽蔑の念が窺えた。
さっきよりも刺々しい声色で、毒を持った言葉を放つ。
「そういうところ、本当に嫌い」
吐き捨てるような言い方に呼吸が止まりそうになった。
毒を浴びせられた身体が、心が、爛れていく。
「あたし、別に叶人くんのことが好きだったわけじゃないし。それに……あたしも彼も大事? そもそも勘違いしないで。あんたと友だちになった覚えなんかないから」
「え……?」
「ただ何もできないあんたと一緒にいて、世話を焼いてれば自分の印象が上がると思っただけ。そのために一緒にいたの」
足元が揺らぎ、崩れ落ちていくような気がした。
既に感覚を失った両脚に、それでも力を入れていないと立っていられなくなる。
「じゃあ、叶人くんのことは……」
真っ先に聞きたいことはほかにいくらでもあったはずなのに、口をついたのはそんな言葉だった。
受け入れられないから、それ以上聞きたくないから、自ずと思考が弾かれたのだと思う。
日和にとって、わたしは友だちですらなかったなんて────。
「ムカついてたんだよ、あんたにもあいつにも。だから、ただの仕返しよ」
まるで用意されていたみたいによどみない口調で言ってのけた日和は、それから自嘲気味に笑う。
「でも、お陰でこのざま。……本当に怖いよ、みんな騙されちゃって」
視線を流した日和はふいにそこで言葉を切った。
眉根に力を込め直すと、厳しい眼差しをわたしに突き刺してくる。
「とにかく、二度とあたしに話しかけないで」
そう言い捨ててわたしの横を通り過ぎていった日和は、振り返ることなく階段を上っていってしまう。
追いかける気力なんてもう湧いてくるはずもなく、うつむいて立ち尽くした。
聞こえてくるのは日和への非難や悪口ばかり。
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
────そういうところ、本当に嫌い。
────あんたと友だちになった覚えなんかないから。
日和の明るい声が、向日葵みたいな笑顔が、先ほど浴びせられた毒で塗り替えられていく。
耳の奥で反響するたび、鋭い刃となってわたしの心を切り裂いた。
決定的だったのは叶人くんの件だと思っていた。
それなら悪いのはわたしなのだから、嫌われても仕方がない。
だけど実際にはそれよりもずっと前から、最初から、わたしたちに絆なんてなかった。
日和を大事な友だちだと思っていたのはわたしだけ。
わたしの一方的な思い違い。
それなのに、わたしの知っている日和はもうどこにもいない、なんてお門違いな傷までもを負っていた。
じわ、と視界が滲んで泣きそうになってしまう。