消して、奪って、きみだけを
その日もいつものように叶人くんと河川敷へ行って、ふたりで猫を眺めていた。
猫は随分と心を開いてくれたようで、ご飯もミルクもうれしそうに口にしては、買ってきたおもちゃでも遊んでくれるようになった。
そのとき、芝生の生えた土手の方から数人の男の子たちが現れた。
『なにしてんのー?』
面白がるような口調と、にやにやと軽薄な薄ら笑い。
叶人くんに嫌がらせをしていた、クラスで目立つ男の子たちだった。
叶人くんを気味悪がるような噂は絶えず、その頃にはそれが嫌がらせへと発展していたのだ。
陰口では飽き足らず、直接手出しして叶人くんを困らせている筆頭が彼らだった。
とっさに叶人くんがわたしを見た。
惑うような瞳は怯えているようにも感じられて、立ち上がったわたしは彼らを睨んだ。
『なにも。かってに入ってこないで』
『公共の場じゃん、おれらの自由ですー』
たぶん、わたしは場所そのものというより、わたしと叶人くんの空間や時間を荒らされるのが嫌だったのだと思う。
怯みもしないでへらへら笑った彼らは、白猫の存在に気がついて「ねこだ!」と声を上げた。
猫は驚いたのか、ダンボールの中へと逃げ込む。
『なにこれ、ここで飼ってんのー?』
『関係ないでしょ』
彼らはますます面白がるように近づいてきて、ダンボールを覗き込んだ。
猫は警戒するようにじっと身を硬くしている。
呼びかけても反応がないことがつまらなかったのか、手近な木の枝を拾い上げたそのうちのひとりが、それを猫に向けた。
つつかれた猫は鳴き声を上げて身をよじる。
逃げようとしたけれどダンボールの蓋がつかえて、結局外に出る方が危険だと判断したのか、そのまま大人しく縮こまった。
『ちょっと! やめてよ!』
慌てて庇うように立ちはだかり、男の子から木の枝を奪おうとしたけれど、身長が足りず手が届かなくて易々と躱されてしまう。
そのうちに叶人くんがダンボールへ駆け寄った。
怯えたように震える猫を抱き抱え、男の子たちの方を鋭く睨みつける。
『なに熱くなってんだよ』
『必死すぎー』
からかうように笑った男の子たちが再び猫に枝を向けた。
それを見た猫はパニックになったのか、爪を立てたり「シャー!」と威嚇したりと必死に抗い出す。
暴れる猫をそれでも強く抱き締め、守ろうとしている叶人くんをひとしきり笑った彼らのうちのひとりが「そうだ」と手を打ち鳴らした。
『いいこと思いついた! おまえ、この猫黙らせてみろよ』
木の枝で猫を指し、叶人くんに言う。
『飼ってんだったら簡単だよなー』
『そしたら俺たちの仲間に入れてやるよ』
思わぬ提案に戸惑ったのか、叶人くんは目を瞬かせる。
その腕が緩んだ隙に飛び降りた猫は、逃げるように走っていってしまった。
『あ……』