消して、奪って、きみだけを
「じゃあ……キスして」
思わぬひとことに「え!?」と上げた声は裏返りそうになった。
不安が薄まった代わりに、期待を滲ませたような熱っぽい眼差しを注がれていた。
「羽衣からしてくれたら安心できそう」
なんて正直にずるいことを言うんだろう。
途端に息を吹き返した様子で心臓が騒ぎ出し、頬が熱くなっていく。
「そ、それは、外ではちょっと……」
「こんなふうに抱き締めておいて? 大胆なのか、初心なのか」
おかしそうに叶人くんが笑った。
言われてみればそうなのだけれど、いまさら離れようにもいつの間にか腰のあたりに回されていた彼の手のせいで叶わない。
「……大丈夫だよ、僕たち以外に誰もいないから」
そわそわと落ち着かない気持ちであたりを見回すと、確かに人通りはなくてほっとしてしまう。
ふ、と彼は小さく笑んでわたしを見つめた。
「ほら」
意気地のない自分を吐き出すように息をつき、観念した。
それで叶人くんが安心してくれるのなら。
わたしの想いがぜんぶ伝わるのなら────。
「……っ」
背伸びをして引き寄せるように彼に掴まると、一瞬だけ口づけた。
どきどきしすぎて息の仕方も忘れる。
たぶん真っ赤に染まっているのであろう頬が熱かった。
そっと目を開けて彼を見上げてみる。
「安心、できた……?」
驚いたように目を見張っていた叶人くんが、今度はわたしを引き寄せた。
顎をすくうように上向かせてキスを落とす。
その手を頬に添えてもう一度口づけられると、指先まで甘い熱が行き渡って痺れるような感覚がした。
満たされて夢心地になる。
そっと離れてわたしを見つめる叶人くんから目を逸らせない。
「……うれしい。本当にしてくれるなんて」
ほっと緩んでとろけたような笑顔に気を取られかけ、はたとその言葉に慌てる。
「え……冗談だったの?」
「半分ね。でも、期待してたから」
うれしそうに笑みを深めた彼の指先が、愛しむように頬を撫でた。
「……予想以上にかわいくて、どうにかなりそうだった」
「か、叶人くん……」
ただでさえ冷めない頬がますます熱を帯びていく。
くすりと笑った彼はやっぱりどこまでも甘く、敵わない。
この心をまるごと取り出して見せられたらいいのに。
とっくに彼だけのものだと証明できたら、不安や寂しさなんてきっと塵みたいに吹き飛ぶ。
「どこか寄って帰る? 何か食べるなら……半分どころか、僕の分もぜんぶあげるよ」
何気なく言われた言葉は、けれど何気なく流れていかず、戸惑って目を瞬かせた。
「……え」
「ワッフルでも買う?」