消して、奪って、きみだけを
見る影もないほどぼろぼろのくまを見つめ、いっそう強く握り締める。
その震えた声を聞いて心臓が縮み上がった。
「ちがう、待て。そうじゃなくて、俺は────」
「ひどいよ。盗聴器っていうのも何の話? どうしてまた叶人くんのせいにするの? 涼まで……叶人くんを悪く言わないで!」
愕然とした。
泣きそうな表情に言葉を失ってしまう。
その目には、若宮ではなく俺への失望が滲んでいた。
鈍器で頭を殴られたみたいな衝撃が落ちてきて眩む。
何か言わなければ、と焦るほど言葉が出てこなくて、文字通り開いた口が塞がらない。
何で、と揺れる頭の中で繰り返した。
そうじゃないだろ、と心の中で叫んだ。
まず盗聴器のことに驚くべきで、それが若宮の仕業だということに失望するべきだ。
なぜ信じてくれないんだろう。
理解が追いついていないのか、それとも、また若宮に都合のいいように記憶を────。
忘れさせるだけじゃなく、書き換える力もあるのか?
自分を信用するよう、俺が悪者になるよう、仕向けられているのか。
「……大丈夫だよ」
渦巻く思考は、そんなひとことで砕けて割れた。
優しくそう言った若宮は、羽衣のてのひらごとマスコットを握る。
安心でもさせるように微笑んでみせると、俺に向き直って言う。
「盗聴器、ね。それがマスコットに入ってたことは分かったよ」
その顔に余裕の笑みをたたえたまま、わざとらしく首を傾げる。
「でも、僕が仕込んだって証拠はあるの?」
「それは……っ」
反射的に口を開いたものの、あとに言葉が続かなかった。
はっとさせられる。
つい視線をさまよわせながら押し黙った。
証拠はあるの? ────そんな常套句、ほかでもないこの物証で切り崩せるはずだった。
しかし、あくまでこれは盗聴の証拠。
若宮と繋がらなければ、追い詰める武器にはなり得ないことにいまさら気がつく。
「僕が羽衣にあげたのはそうだけど、そのあとほかの誰もマスコットに触ってないって証明できる?」
たまらず唇を噛み締めた。
それは無理だろう。
現に俺や立原も触れられたわけだし、鞄が教室に置かれている間はクラスメート全員、さらには教室に出入りした全員が容疑者になる。
理論上、不可能ではないからだ。
「ねぇ、立原さんも見たって言ったよね。きみは証明できる?」
ふと、若宮がそう投げかけた。
俺の背後で気配を消すように立っていた立原は、一拍置いて首を横に振る。
「……できない」
考えるように視線を逸らし、平坦な声色で淡々と続けた。
「わたしが見たのは、篠崎くんが切り開いたマスコットの中から機械が出てきたところだけ。誰が入れたのかなんて分からない」