消して、奪って、きみだけを

 恋人からもらったマスコットの中に盗聴器が入っていた、なんて状況的にはかなり危うい。
 あいつが仕込んだのだと証明はできなくても、無関係だと扱われるかどうか。

「……そしたら、彼はどうなるの?」

「分かんねぇけど、ただでは済まないだろ。ほぼストーカー同然だし、聞かれたら俺もそう話す。そうすれば羽衣から引き剥がせるかも」

 希望を込めてそう言うと、立原がわずかに目を見張った。
 実際、それくらいのインパクトがある出来事だし、大げさなことを口にしているつもりはない。

「じゃあ、それはどうするの?」

 盗聴器を指して尋ねてくる。
 もちろん、担任や警察に話すことになれば現物として預けるつもりだ。

 あいつのものであることも、あいつが仕込んだということも証明のしようがない以上、俺が盗聴器を持っていること自体は、あいつにとって現段階では致命傷ではない。

 しかし、そういう事態────俺が大ごとにして若宮を羽衣と離そうとする可能性も想定しているはず。
 そういう意味では厄介なものだろう。

「俺がこのまま持ってると、取り返しにくるかもしれない。そうなると面倒だから……ひとまず、裏庭の植え込みに隠しておく」

「何でそんなところ?」

「隠し場所としてまず思いつかねぇだろ。ほかの関係ないやつが拾うとも思えねぇし」

 そう言うと、腑に落ちた様子で「なるほど」と立原は頷く。

 しかし、悪いがそれは嘘だった。

 若宮が先ほどの出来事でどの程度立原を警戒しているか分からないが、利用価値のある存在にはなってしまっただろう。

 脅迫するなり何なりして盗聴器の隠し場所を問い詰められれば、立原は答えざるを得ない状況に追い込まれるかもしれない。

 この件は俺ひとりでどうにかするしかない。

 そう密かに決めると、タイミングを見計らって盗聴器を自分の靴箱の中に隠しておいた。



     ◇



 机に鞄を置くと、手にしていたマスコットを見つめる。
 くまは無造作にはさみか何かで切り裂かれ、お腹の部分からはこぼれ落ちそうな綿が見えていた。

 見るも無惨な姿に悲しくなってくる。
 大切なものを勝手に壊されただけじゃなく、叶人くんとの時間や彼の気持ちまでないがしろにされたみたい。

 涼はどうしてこんなことをしたんだろう。

 盗聴器だとか物騒な話をしていたけれど、あれもどういうことなんだろう。

 あれが本当に盗聴器で、いつの間にかこの中に仕込まれていたのだとしたらにわかには信じられない。

 だけど、それが叶人くんの仕業だなんてもっと信じられない。
 どうして彼がそんなことをするというのだろう。
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