消して、奪って、きみだけを
そろりと再び覗いてみる。
若宮がいるのは裏庭で、普段ひとなんて滅多に来ない場所だ。
飯を食べたり談笑したりできるようなベンチは設置されているものの、わざわざ靴を履き替えてまで向かうのは面倒だから。
そんなところへ、何の用があるのだろう。
靴以外には何も持っていないようだったが。
若宮は裏庭の周囲に茂る植え込みを覗き込んだり、そのそばに屈んだりしているようだ。
何をしているんだろう、と再び訝しく思って眉をひそめる。
まるで何かを探しているみたいな────そこまで考えつき、はっと目を見張った。
あいつが探しているのは、まさか盗聴器?
ざわざわと胸が騒ぎ、困惑の波が押し寄せる。
『じゃあ、それはどうするの?』
『俺がこのまま持ってると、取り返しにくるかもしれない。そうなると面倒だから……ひとまず、裏庭の植え込みに隠しておく』
今朝の会話が遠くの方から浮かび上がってくるように耳の奥で響いた。
寄せる波が俺の足まで浸し、ひんやりと体温を奪っていく。
なぜ、それを若宮が知っている?
このことは立原にしか伝えていないのに。
(まさか……立原が?)
俺の言葉を若宮に密告したのだとしたら、若宮が密かにここへ現れたことにも説明がつく。
盗聴器を回収したいあいつは、隠し場所と聞いていたからこそ裏庭を探しているのだ。
いや、そんなまさか。
あの立原がなぜ若宮にそんなことをする必要がある?
しかし、そうでなければありえない。
普通に考えてここにたどり着くとは思えないし、偶然の範疇を超えている。
立原しか知り得ないはずの情報を若宮が知っていたなら、やっぱり立原があいつに伝えたとしか思えなかった。
「……っ」
くそ、と息を殺したまま心の中で毒づき、きつく拳を握り締める。
いつからグルだったのだろう。
いったい、いつから繋がっていたのか。
────あなたのことだから、もう彼に警戒されてるんでしょう? そんな篠崎くんが唯一の物証を持ってるなんて危険です。
────だから、わたしが預かる。わたしならノーマークだろうから。
あれは俺を案じてくれていたわけじゃなく、若宮のために先んじて盗聴器を回収したかったわけだ。
あの場で渡していたら恐らく今朝の時点で、いや、昨日の時点で若宮の手に渡っていたはず。
そうか、といまさら合点がいった。
今朝のあいつの余裕は、俺の思惑を既に立原から聞いていたからか。
盗聴器を回収できなかったから、ああして論理的にねじ伏せる方向へシフトしたのだ。
────……じゃあ、わたしもそうしたい。
────あなたがそうなら、わたしも桜木さんを守る。
その言葉まですべて嘘だったのだろうか。
俺を油断させて、味方だと思い込ませるため?