消して、奪って、きみだけを
揺れる長い睫毛は不安定な彼女の心情をそのまま表しているみたい。
散り際の萎れた花のような、壊れものみたいな雰囲気だった。
「あなたもお人好しですよね。まだわたしの心配してるなんて幸せ者」
棘のある言い方なのに、声色が弱々しいからか嫌なニュアンスは感じられない。
どういう意味だろう。
そう思っていると、美怜ちゃんが足元に目を落とした。
「この怪我、篠崎くんのせいだなんて嘘なの。わたしが自分でやった」
「え……!?」
思わぬ言葉に驚愕して目を見張る。
まじまじと見つめて待ってみても、撤回される気配はなかった。
それ以上に自ら説明を続けてくれる気もないみたいで、たまらず食い下がる。
「ど、どういうこと? どうしてそんな嘘……」
「本当に分からない? 結果を見れば答えは明白でしょう」
ようやく顔を上げてくれたけれど、その表情には苛立ちが滲んでいた。
眉を寄せて睨むような眼差しを寄越され、気圧されてしまう。
結果というのは、怪我を涼のせいにした結果という意味だろうか。
誠実な涼は責任を感じて、美怜ちゃんにつきっきりになっていた。
それが目的だったということだろうか。
涼に、そばにいて欲しかった?
「あなたのせい。何もかもぜんぶ、あなたが悪い」
答え合わせも許さないまま、美怜ちゃんはそう続ける。
ふいに、心臓に刃の切っ先を突きつけられた気がした。
「あなたのせいでわたしは嘘をつかなきゃならなかった。あなたさえいなければ、こんなことにもならなかったのに」
ずぶずぶと冷たい刃が沈んでいく。
自分が何をしてしまったのかも分からないまま、黒くて深い瞳の暗さに飲み込まれそうになる。
「彼だけだったのに……。信じられるのも、頼れるのも」
ふと目を伏せ、唇を噛み締めるようにして彼女は小さく呟いた。
涙がこぼれてくるような幻を見て息をのむ。
刃は抜けずに埋まったまま、ばらばらに砕け散った。
突き刺さるより疼くような鈍い痛みと冷たい異物感が胸の中に残る。
何がきっかけでそれほど涼を必要とするようになったのか、わたしには分からない。
嘘をついてまで留め置きたいほど切実だったとも知らなかった。
わたしの存在が自ずとそれを邪魔していたなんて、夢にも思わなかった。
気づかないうちに彼女の心を脅かすことになっていたなんて。
ぽろぽろと刃の欠片が抜け落ちていく。
言葉が見つからないまま、だけど何か言わなきゃ、と開きかけた唇の隙間から、自分でも驚くような言葉がこぼれた。
「わたし、と……友だちにならない?」