消して、奪って、きみだけを
「まあ、とにかく。あいつは最初からずっと嘘ついてたってわけだ。若宮に言われて、俺を騙して拘束しておくために」
「それは……どうかな」
控えめながらはっきりと羽衣は異論を唱えた。
「美怜ちゃんは騙そうと思って怪我を涼のせいにしたわけじゃないと思う。悪意とかじゃなくて……たぶん、それ以外に方法を知らなかったんだよ」
思わぬ言葉に眉を寄せる。
あの嘘が、若宮と手を組んでいたことが、悪意からではなかったなんてありうるのだろうか。
「どういうことだ? 方法って、何の?」
「えっと、それは……わたしからは言えないけど」
視線をさまよわせ、困ったようにうつむく。
でも、とすぐに顔を上げた。
「美怜ちゃんは悪い人じゃないよ。それだけは涼も信じてあげてくれないかな」
もしかして、どこかのタイミングで何か話したりでもしたのだろうか。
何を聞かされたのか分からないが、それだって若宮の入れ知恵という可能性もある。
羽衣を通して俺にこう働きかければ、もう一度丸め込むことができると踏んだのかもしれない。
それなら、ますます簡単に耳を貸すわけにはいかなかった。
「……信じるっつっても、事実として嘘はついてただろ。そもそも若宮に協力してる時点で信用なんかできねぇよ」
縋るような羽衣の眼差しから逃れるべく目を逸らし、返した声は硬くなった。
羽衣は口をつぐみ、それ以上のことは言わない。
こうやってひとの意思や選択を尊重してくれる羽衣が、自身のそれを奪われているんだからなおさら現状が解せなくなってくる。
「まあ、それはとりあえずいいよ。おまえが話聞いてくれてよかった」
何よりほっとして、そうこぼすと羽衣は不安そうな表情をした。
おずおずと確かめるように尋ねる。
「その……盗聴器のことも本当なの?」
「本当。残念ながら証明はできねぇけど、あいつが仕掛けたって俺は言いきれる」
やっぱり、さすがに衝撃的だろう。
そのことまで善性を信じて美化したような解釈はできないはずだ。
怖いし、度を越している────動揺を隠せない羽衣からはそんな率直な感情が窺えた。
あいつが記憶のことを探るためか、自分の不安を埋めるためか、あるいは別の目的があるのか。
いずれにしても監視されていたような、信用ならないと暗に示されていたような、不穏すぎる代物だ。
羽衣としても快いはずがないだろう。