消して、奪って、きみだけを
わたしの思い出した記憶について、率直に思ったことを口にしたみたい。
苦くて痛いような心地がしてつい目を落とした。
「そう、だね……。あまりにも自分勝手だった」
「それがいまのあいつの原型になったってことなのかな。模倣してるみたいじゃん」
わたしのことも叶人くんのことも、あくまで責めることなく涼が言う。
横顔からも伝わってくるその硬い表情を見つめた。
「……それを“仕返し”だとか言うかと思った」
「まあ、復讐の可能性も追ってたくらいだしな。おまえに孤立させられたって恨んでるなら、いまになって同じこと仕返してるとも考えられるだろうけど」
懸念していたことを正直に告げると、そう言って一度言葉を切った涼はこちらに向き直る。
「それはないと思う。孤立したくないやつが、自分から周りのやつらとの関係切ってくなんてしねぇだろ」
確かにそれはそうかもしれない。
叶人くんは自ら周囲の人を遠ざけ、わたしといることを選んだ。
「単純に、あいつにとっても本望だったんだろ。そうやっておまえに言われたことがうれしかったから……その答えってことじゃねぇの?」
彼が抱いている不安は、あの頃のわたしと同じ感情ということなのだろうか。
それだけじゃない気もするけれど、それも含まれていてもおかしくなかった。
そう納得すると同時に、意外なような感心したような気持ちで涼を見やる。
あれだけ叶人くんを敵視し、危険だと主張していたのに、そこまでフェアな視点でものごとを捉えているなんて誠実な涼らしい。
貶めたいわけじゃなく、真っ当な不信感なのだと理解が及ぶ。
「あのね────」
口を開きかけた瞬間、キィ、と扉の開く音がした。
はっとして涼と顔を見合わせる。
フェンスが張り巡らされているだけでほかに何もないバルコニーは、そう頻繁に人が出入りする場所じゃない。
もし叶人くんだったりしたら避けた意味がなくなってしまうので、慌てて壁沿いへ寄った。
ものがないということは隠れ場所もないのだけれど、バルコニー自体は“凹”の形をしているため、扉から見て死角になる部分に屈む。
「……篠崎くん」
ややあって扉から姿を現したのは、なんと美怜ちゃんだった。
「おまえが何の用だよ」
涼の声は刺々しく、その態度も彼女への拒絶を表しているのは明白。
どうやら、もともと約束を取りつけて話しにきたわけではないみたい。
「ごめんなさい」
鬱々と目を伏せたまま、美怜ちゃんはしおらしく頭を下げる。
綺麗な長い髪がさらさらと肩からこぼれ落ちていった。
突然のことに涼も困惑している様子で、眉を寄せて口をつぐんでいる。
美怜ちゃんに裏切られていたという事実に腹を立ててはいるものの、怒ればいいのか突っぱねればいいのか、とっさに決めかねているようだ。
そのうちに顔をもたげた彼女が、凜とした眼差しを涼に向ける。
「……わたし、あなたのことが好きだったんです」
思わぬ告白に、驚いて口元を覆った。
目を見張ったまま瞬き、美怜ちゃんと涼を見比べる。
(そうだったの……?)