消して、奪って、きみだけを
────そのとき、ふいにスマホが震えた。
渦巻く思考が割れて、はっと意識が現実へと引き戻される。
【ねぇ、どうして】
ぞくりとした。
たったそれだけの短いメッセージだったけれど、衝撃的だったのは、内容そのものよりその送り主の方だ。
「こ、これって……」
SNSのダイレクトメッセージ。
履歴を遡ってみると、以前送られてきたものが残ったまま。
【今日もかわいいね】
【早く会いたい】
【大丈夫? 足元に気をつけてね】
以前、ストーカー紛いの得体の知れない目が常時わたしに張りついていたことを思い返す。
そのときの不気味さや恐怖までもがありありと蘇ってきて、冷えた肌があわ立った。
「こいつ、あのときの?」
「でも、あれって正体は高橋だったんじゃ……」
涼と日和が不可解そうに顔を見合わせる。
確かにあのストーカー事件は高橋くんが犯人だったと判明して解決したはず。
叶人くんがあそこまで厳しく釘を刺して守ってくれたことを思えば、すっかり気力を失っていた高橋くんが再びあんなことをするとは思えないし、いまになってメッセージなんて送ってくる理由も分からない。
「きな臭くなってきたな。とりあえず、高橋のやつ問い詰めるか」
怪訝そうに眉を寄せる涼がそう言うと、一方の日和は真剣な表情でわたしに向き直った。
「羽衣は叶人くんに相談してみたら?」
意外な提案だったけれど、できればそうしたいと思っていた。
正体不明の恐怖に晒され続ける不安と息苦しさにはひとりで耐えられそうもないし、彼ならきっと親身に寄り添って助けてくれる。
けれど、日和の思惑はわたしとはまた別のところにあるみたいだった。
「もしかしたら叶人くんが絡んでるかもしれないし。そうじゃなくても、高橋のときみたいに完璧に対処してくれるのは間違いないから。悔しいけど、そういう意味では安心なんだよね」
「一理あるよな。どっちにしても、羽衣は相談した方がいいと俺も思う」
ふたりの警戒心と危機感を受け、いっそう体温が下がったような気がする。
さすがに、耳を塞いで撥ねつけることも、無条件で彼を信じて庇うようなことももうできなくなっていた。
「……分かった、そうする」
小さく頷いてから、ついうつむきかけた顔を上げる。
「でも、わたし……叶人くんが悪い人だって証明したいわけじゃないよ」