消して、奪って、きみだけを
完全に無実ではなくても、悪意で歪んでいるわけじゃない。
彼の優しさも想いの深さも、わたしはあの頃からよく知っている。
その確信をわたしだけは手放したくない。
「分かってる。それもおまえの自由だ」
「……でもね、羽衣。あたしたちも叶人くんを傷つけたいと思ってるわけじゃない。あんたを守りたいの」
背中合わせの優しい温もりと、手を取ってくれる頼もしい温もりが、まっすぐ心に届いて触れたような感覚がした。
取りこぼしてきたのは、そんなふたりの真意や想いもそう。
あたたかく照らされながら受け取ると、噛み締めるように頬を和らげた。
「────ありがとう」
◇
【いなくならないで】
【ここにいて】
連日、不定期にダイレクトメッセージが届き続けた。
────高橋くんはシロだった。涼はそう言っていた。
あれから問い詰めてみたところ、彼は全力で否定し、自身のスマホを自ら見せてくれたらしい。
あのときはタイミングが重なったことで、ダイレクトメッセージの送り主までストーカーに繋げて怯えてしまっていたけれど、そもそもその送り主は高橋くんじゃなかったんだ。
ひいては、これはストーカーですらないとわたしは薄々感じ始めていた。
「……羽衣、何か考えごと?」
日の傾く帰り道、つい足を止めたわたしを叶人くんが振り返る。
案じてくれるような表情の中に見え隠れする、もっと繊細な色を探した。
「あ、あのね……実は、またDMが届くようになって」
日和の助言通り、そのことを打ち明けてみる。
叶人くんは特に驚くことなく、長い睫毛をわずかに揺らがせて神妙な表情をたたえた。
────……僕はどんなに望んでも叶わなかったのに。
────……ちょっとだけ、このままいさせて。
そんなカラメルみたいな叶人くんの声が、苦く切ない響きを保ったままわたしの中で揺れる。
抱えた不安に耐えきれなくなったとき、余裕をなくした彼はずっと震えているみたいだった。
同じ温度や湿度を感じるのだ。
このダイレクトメッセージに込められているのは、悪意ではなく膨大な不安。
普段、綺麗な微笑みや言葉の裏に隠れているそれが露出したのがこれらのメッセージだと直感的に思った。
つまり、この送り主は叶人くんなんじゃないだろうか。