消して、奪って、きみだけを
     ◇



「狙いは俺ってわけか」

 ひと通り話すと、涼が顎に手を当てて「なるほど」といった具合に呟く。

 軽い調子を装っているけれど、実際にはかなり身構えているのが見て取れた。

 体育終わりの休み時間、少しばたつくこのタイミングなら叶人くんの警戒心を買うことなく集まれると踏んで、3人でバルコニーに出ていた。

 朝から空は厚い雲に覆われていて、晴れ間がなくどんよりとしている。
 そのうち雨が降り出しそうだった。

「涼をストーカーに仕立て上げて、今度こそ完全に断絶させる気だね。あんたが一方的な悪者ってことにすれば、羽衣も心を痛めず切り捨てられる。したがって記憶を消す必要もなし」

「見事なもんだな」

 冷静な日和の推論を受け、涼が苦く笑う。

 叶人くんが迷うことなく涼を疑う方向へシフトしたということは、もっと言えばそうするよう仕向けようとしたということは、その可能性がかなり高い。

 やっぱり、あのダイレクトメッセージ自体は叶人くんの仕業。
 再会するよりも前から、ずっと。

 だけど、ストーカーを装うことだけが目的ではなかったはず。
 それなら、もっとわたしを怖がらせるような不穏な文言を選ぶだろう。

 そして、涼を(おとしい)れることを最初から狙っていたわけでもないはずだ。

 それなら、もっと本人を装った口調にするだろうし、逆恨みを疑わせたいならそういう内容にするのが自然だから。

 何だか、無理やりそのための材料に使ったみたい。

「本っ当、いい性格してる」

 腕を組んだ日和が、ふとこちらを向いた。

「ねぇ、羽衣。どんなDMが届いてるの?」

「それは……言えない」

 小さく首を横に振って答える。

 本当ならわたしにさえ見せたくないはずの不安の結晶が、溶けない雪みたいに積もってきていた。

 わたしの心の中はスノードームみたいな冬景色だけれど、彼の心の中は氷点下で凍っているかもしれない。

 それがなれの果てなら、いつまでその冷たさに耐えなきゃならないんだろう。
 いまも、きっと震えている。

「そんなやばい内容なの? ま、いいけど。あんたが本当のこと分かっててくれてるなら……。だって、そうじゃないとまず羽衣が自分のこと守れないし」

「そうだな。いまはそれだけが救いかも」

 日和に頷いた涼は、それから表情を引き締めて言った。

「だからこそ、このまま泳がせてあいつの手に乗ろうと思う。今度こそ化けの皮を剥がす」
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