消して、奪って、きみだけを
◇
昇降口で靴箱の扉を開けると、ローファーの上に何かが置かれていた。
二つ折りにされた無機質なルーズリーフと、その上に乗せられたヘアピン。
白い花が3つ連なっているかわいらしいデザインだけれど、何だか異質だった。
思わず固まりかけて、そろりと手を伸ばす。
ルーズリーフを開いてみると、そこにはこう書かれていた。
“きっと似合うと思って”
脳裏に苺柄の包装紙が蘇った。
机の中に忍ばせられていたあの手紙と、たぶん同じ人物の仕業だと直感する。
思わずルーズリーフを裏返すけれど、やっぱり名前は書いていない。
代わりに下の隅にこう書かれていた。
“今日もかわいいね”
それを見た途端、どくん、と心臓が大きく鳴った。
ぱっと弾かれたようにルーズリーフとヘアピンを取り落としてしまい、逃れるようにあとずさる。
(これって……)
以前届いた匿名のダイレクトメッセージと重なる。
まさか、その差出人の仕業なんだろうか。
早鐘を打つ心臓が急速に冷えていく。
それどころじゃなくなって最近は意識していなかったものの、知らない誰かの目はまだわたしから逸れていないみたいだった。
もしかしたら、いまこの瞬間だってどこかから見られているかもしれない。
針のむしろで撫でられたように、ぞっと全身があわ立つ。
震える手でルーズリーフとヘアピンを慌ただしく拾い上げると、逃げるように教室へ向かった。
(また……)
誰かに見られているような気がする。
強い視線を感じ、冷えた手で鞄の持ち手を握り締める。
放課後、学校を出てすぐのタイミングではまったくそんな気配なんてなかった。
だけど、涼や日和と別れてひとりになった途端にこれだ。
(誰なの……?)
あたりを見回すけれど、どこにも怪しい人影は見当たらない。
だけど、この期に及んで気のせいなんて思えない。
不気味な気配は背後にぴったりと迫ってきている。
きっと、ここまであとをつけてきたんだ。
もはやストーカーと称するほかない。
いまはこれで済んでいるけれど、ひとりになるタイミングを見計らっているのなら、もし相手が姿まで見せるようになったら────。
「……っ」
慌てて地面を蹴ると、逃げるように駆け出した。
得体の知れないストーカーの手が伸びてくる、腕で押さえ込まれる、恐ろしい想像が頭の中で渦巻く。
怖い。気味が悪い。
どうしてわたしなんだろう。
こんなことなら、家まで誰かについてきてもらえばよかった。
そんなことを考えながら、背中に張りついて離れない恐怖を振り払おうと懸命に走り続けた。
昇降口で靴箱の扉を開けると、ローファーの上に何かが置かれていた。
二つ折りにされた無機質なルーズリーフと、その上に乗せられたヘアピン。
白い花が3つ連なっているかわいらしいデザインだけれど、何だか異質だった。
思わず固まりかけて、そろりと手を伸ばす。
ルーズリーフを開いてみると、そこにはこう書かれていた。
“きっと似合うと思って”
脳裏に苺柄の包装紙が蘇った。
机の中に忍ばせられていたあの手紙と、たぶん同じ人物の仕業だと直感する。
思わずルーズリーフを裏返すけれど、やっぱり名前は書いていない。
代わりに下の隅にこう書かれていた。
“今日もかわいいね”
それを見た途端、どくん、と心臓が大きく鳴った。
ぱっと弾かれたようにルーズリーフとヘアピンを取り落としてしまい、逃れるようにあとずさる。
(これって……)
以前届いた匿名のダイレクトメッセージと重なる。
まさか、その差出人の仕業なんだろうか。
早鐘を打つ心臓が急速に冷えていく。
それどころじゃなくなって最近は意識していなかったものの、知らない誰かの目はまだわたしから逸れていないみたいだった。
もしかしたら、いまこの瞬間だってどこかから見られているかもしれない。
針のむしろで撫でられたように、ぞっと全身があわ立つ。
震える手でルーズリーフとヘアピンを慌ただしく拾い上げると、逃げるように教室へ向かった。
(また……)
誰かに見られているような気がする。
強い視線を感じ、冷えた手で鞄の持ち手を握り締める。
放課後、学校を出てすぐのタイミングではまったくそんな気配なんてなかった。
だけど、涼や日和と別れてひとりになった途端にこれだ。
(誰なの……?)
あたりを見回すけれど、どこにも怪しい人影は見当たらない。
だけど、この期に及んで気のせいなんて思えない。
不気味な気配は背後にぴったりと迫ってきている。
きっと、ここまであとをつけてきたんだ。
もはやストーカーと称するほかない。
いまはこれで済んでいるけれど、ひとりになるタイミングを見計らっているのなら、もし相手が姿まで見せるようになったら────。
「……っ」
慌てて地面を蹴ると、逃げるように駆け出した。
得体の知れないストーカーの手が伸びてくる、腕で押さえ込まれる、恐ろしい想像が頭の中で渦巻く。
怖い。気味が悪い。
どうしてわたしなんだろう。
こんなことなら、家まで誰かについてきてもらえばよかった。
そんなことを考えながら、背中に張りついて離れない恐怖を振り払おうと懸命に走り続けた。