消して、奪って、きみだけを
     ◇



 昼休みを迎え、涼と日和は購買へ向かう。
 今日はお弁当を持ってきているわたしは教室に残り、叶人くんと一緒にふたりを待つことにした。

「羽衣、平気?」

 知らないうちにため息がこぼれていたことに、そのひとことで遅れて気がつく。

「何か元気ないみたいだけど、体調でも悪い? それとも何かあった?」

 不気味なストーカーのことを誰かに相談したかった。

 ────今日だって、休み時間にお手洗いから戻ってきたら、鞄のポケットにあのメモが入れられていた。
 息をのんであたりを見回しても、やっぱりそれらしい人物は見当たらない。

 おののきながら取り出してみると、ぞくりと背筋が凍てついた。

 “何でつけてくれないの?”

 それは間違いなくあのヘアピンのことを言っているのだろう。

 逆恨みに発展したりするのも怖くて、一応捨てずに持ってはいるけれど、どうしたってつける気にはなれない。

 持ち続けているというだけでも恐怖で精神がすり減っていくのに、追い討ちをかけるような文言だった。

 それでいて、差出人にとっては本当に純粋な好意だと物語っているみたい。

 怖くて不安でたまらないのに誰にも言い出せなかったのは、いざ口にしようとすると“気のせいかも”という考えがよぎるせいだ。

 視線を感じても、一度たりとも姿を見ていない。
 それにその気配だって、忍び寄ってくるのはいつもわたしがひとりのときだけ。

 あの贈りものだって、きっと本当に誰かの善意や好意。
 実際、手紙に書かれている言葉も入れられているものも実害に繋がるような危険なものじゃなかった。

 誰かといれば少しは気も紛れるし、ストーカーも遠ざかるから、余計に気のせいだったと思えてくるのだ。
 そう思いたいだけなのだけれど。

 それでも、叶人くんがそう尋ねてくれたことで、わたしの中で我慢の糸が切れた。

 ひとりでは抱えきれなくなった不安がこぼれ落ちていく。

「実は……誰かに見られてるみたいなの」

「え?」

「ダイレクトメッセージとか、匿名の手紙や贈りものとか、ここのところずっと……。朝も視線を感じたことがあるし、帰りもあとをつけられてるかもしれなくて」

 ぎゅう、と自分の手を強く握り締める。
 言葉にするといっそう不気味で、ぞわぞわと肌があわ立った。

 絶えず得体の知れない視線に晒され続けるというのは、思っている以上に恐ろしいことだった。
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