消して、奪って、きみだけを
「そういえば、羽衣のご両親はどうしてる? 久しぶりだし挨拶したいな」
幼い頃に会ったことがあるのだろうか。
そんな口ぶりだけれど、わたしには思い当たらない。
「うーん……しばらくは会えないかな。こないだもそうだったけど」
「どうして? あ、お父さんは仕事で海外にいるんだったっけ。いまもそうなの?」
それを知っているということは、やっぱりそれなりに深い付き合いがあったはずだ。
うちにも来たことがあるのかもしれない。
「そう、いまも。電話とかメッセージはするけど、なかなか会えないんだ。お母さんは……ちょっとやることがあって、おばあちゃんのところにいるの」
母は普段、在宅の仕事をしているのだけれど、いまは祖母の介護や実家の家業を手伝うために帰省していた。
つまり、現在のわたしは実質ひとり暮らし状態。
だからこそ、不気味なストーカーの気配に必要以上に怯えてしまっていた。
「そうだったんだ。じゃあ、なおさら心配だな……。そんな羽衣につきまとってるやつがいるなんて」
口元に手を当て、呟いた叶人くんの声はいつもよりいくらか低かった。
さすがに笑みも浮かべておらず迫力さえ感じる。
図らずも気圧されるものの、彼はすぐに柔らかく微笑みかけてくれる。
「羽衣、もう怖がらなくて大丈夫だよ。僕はきみをひとりにしないし、絶対に守ってあげるから」
◇
宣言通り、朝は叶人くんが迎えにきてくれて、帰りも家まで送ってくれるようになった。
そのお陰なのか、ここのところ数日は匿名の手紙や贈りものが入れられていることもダイレクトメッセージが届くこともなく、ストーカーの気配は遠ざかったように感じられる。
数日前よりいくらか軽やかな心持ちで鞄のファスナーを閉めたとき、涼と日和が歩み寄ってきた。
「羽衣ー、今日も叶人くんと帰るの?」
どこか拗ねたように口を尖らせる日和に、心苦しく思いながら頷く。
「うん……。ごめんね、ちょっと事情があって」
「事情って、俺らにも話せないこと? もしかして何か最近元気なかったことと関係あるのか?」
涼に尋ねられて驚いた。
そこまで気づかれていたなら、もういまさら隠し通すことでもないような気がする。
「あの、実は……ストーカーっぽい人がいて。手紙とかものとか、変なDMが来たりしてたんだ」