消して、奪って、きみだけを
声を落として告げると、ふたりとも息をのんだ。
「ストーカー……!? 大丈夫なの? 誰なのかもう分かってる?」
「ううん、それはまだ分かんない。でも、学校の誰かなのは間違いないの。靴箱やわたしの机にも触れてるから……」
「だいぶ気色悪いね。ていうか、普通に危ないよ。いまはまだ大丈夫でもこのままエスカレートしたら……」
不気味さを覚えてか日和は自身の両腕を掴んでいた。
憂うように眉を下げ、案じてくれる。
「それはそうなんだけど、叶人くんのお陰でだいぶ平気になったの。ここ数日は何事もないし、もしかしたらストーカーが勘違いでもして諦めてくれるかも」
朝も帰りも隙なく叶人くんと一緒なら、わたしたちが付き合っていると誤解してもおかしくない。
それが牽制と抑止になるのなら願ったり叶ったりだ。
もしかすると彼の言った“守る”という言葉は、物理的な意味だけじゃなく、そういう狙いもあってのことだったのかもしれない。
「叶人くんがいてくれて本当によかった」
安堵と希望から思わずこぼす。
わずかに沈黙が落ちたあと、日和が「何で」と口にした。
「何で……そのこと、相談してくれなかったの?」
思わぬ言葉と張り詰めたような声色に驚き戸惑っているうちに、彼女は言葉を繋ぐ。
「普段なら真っ先に打ち明けてくれてたはずなのに。あたしより、涼より叶人くんが優先なの? そんなに頼りなかった?」
「……おい、日和」
それまで口をつぐんでいた涼が静かに口を挟む。
責めているような口調ながら、日和の表情に怒りはなかった。
ちくりと心を針でつつかれているみたいな感覚を覚える。
「そんなこと言ってる場合かよ。羽衣が心配じゃねぇのか?」
「心配だよ、だからこそでしょ? だからこそ、最初に言ってくれなかったことがショックなの。いままではそんなことなかったのに」
確かにいままでのわたしなら、真っ先に日和を頼っていただろう。
何も言わなくてもやっぱり涼には気づかれてしまうから、彼にもそうして相談していたはず。
だけど、ふたりが頼りないとか叶人くんを優先したとか、そんなつもりはまったくなかった。
「ちがうの、たまたま叶人くんに聞かれたときに限界だって感じちゃっただけで。本当はひとりで何とかしようと思ってた。どうなるか分からないから……」