消して、奪って、きみだけを
誤解はして欲しくなくて、傷つけたくもなくて、懸命に言葉を紡ぐ。
涼が呆れたように息をついた。
「ばか、おまえも……。ひとりで勝手に背負い込んでないでもっと頼ってくれよ。そのための友だちだろ?」
「……そうよ、本当に。迷惑とか負担とか思うわけないんだから。羽衣の世話を焼くのがあたしの仕事だって、ね?」
いつかのふたりのやり取りを思い出す。
その言葉に嘘はないと、労るような優しい眼差しから分かった。
「ありがとう……」
わたしはなんて幸せ者なんだろう。
そう実感しながらしみじみと伝える。
涼が、日和が友だちで本当によかった。
「で、話戻すけど。実害はないのか? 大丈夫なんだよな?」
「あ、うん。いまのところ姿を見てもいないよ」
心配してくれる傍ら、確かめるように尋ねてきた涼に頷く。
すると彼は眉を寄せて難しい表情をした。
何か言いたげなのに、ためらうように口をつぐんでいる。
「なに? 何か言いたいことあるなら言いなさいよ」
同じように感じたのか日和がそう促した。
涼は「あー」となおも逡巡を見せた挙句、それでも言いづらそうに口を開く。
「俺はやっぱり……あいつが怪しいと思う」
断定しなかった割に迷いのないトーンだった。
まさか、ストーカーの正体に見当がついている?
「“あいつ”って?」
「若宮だよ」
期待していたところに落とされた答えは、予想だにしないものだった。
叶人くんがストーカー? そんなのありえない。
「ちょっと、またなの? 根拠もなく叶人くんを悪者にするのはやめなってば」
「根拠は確かにねぇけど、勘だよ。これはあいつの自作自演なんだ。羽衣の信用を得るために架空のストーカーを作り出したんだよ」
涼の語り口は真剣そのもので、とても冗談を言っているとは思えなかった。
日和が“また”と言った通り、彼は以前にも叶人くんへの不信感をあらわにしていた。
復讐をもくろんでいると最初に言い出したのも涼だ。
ぎゅう、と自分の手を強く握り締める。
心の表面をざらりとした何かが撫でていった。
「……ひどいよ。そんなふうに言うのはやめて」
たまらずそう言い返していた。
不確実な勘をもとにした懐疑で、叶人くんを貶めるなんてひどい。
あのときはわたしも違和感に振り回され、涼の示唆した可能性を鵜呑みにしかけた。
だけど、それでは叶人くんに対してあまりにも失礼だ。
彼の優しさや気遣いも、守ってくれていることも、わたしにとっては事実でしかない。
そんな叶人くんの意思をまるごと否定するような言い分に耐えられなくなった。