消して、奪って、きみだけを
「涼にそんなこと言わないで欲しかった」
「いや、俺は……」
誰より思いやりが深くて、わたしにとって誰より信頼できる相手。
そんな涼が根拠もなく誰かを悪く言ったということがショックだった。
「……悪ぃ。無神経だった」
言い訳を並べることもなく、彼はただそれだけ口にして目を落とす。
謝りはしても頑なに覆しはしなかった。
その妙なまでに真剣な表情を見ていたら、胸の奥がざわつき始める。
(でも、確かに……)
叶人くんを疑うわけじゃない。
けれど、涼の言葉を受けたせいか、いまになってよぎったことがある。
確かに叶人くんと一緒に登下校するようになってから、ストーカーの気配は遠のいた。
彼といるときはダイレクトメッセージが届くこともない。
裏を返せば、それは────。
(まさか)
慌ててかぶりを振り、不穏な考えを振り払う。
そんなはずない。
ストーカーの正体が叶人くんだなんて、彼の自作自演だなんて、わたしは信じない。
◇
放課後、今日も叶人くんとともに帰路についた。
やっぱり以前よりも直接的にストーカーの脅威を感じることは減ったものの、その分ほかのことが気にかかるようになった。
涼の言葉と、彼が示した疑惑。
涼はあれ以降、叶人くんをストーカー扱いするような言動はしないけれど、完全に疑惑を払拭したわけではなさそうだった。
わたしがいくら“ちがう”と言っても、涼がいくら疑っても、どちらも裏づける証拠がないから平行線。
わたしを守ろうとしてくれている叶人くんの善意をないがしろにしたくないのに、彼といると涼の口にした“自作自演”という言葉がよぎって胸がざわつく。
だから、いまはとにかくストーカーの正体を掴みたい。
こんな気持ちで叶人くんと一緒にいるのが心苦しいのだ。
それに、らちの明かない疑惑に決着をつけるためにも。
「────最近はどんな感じ? ストーカーからのアクションはない?」
「あ……うん、いまのところ大丈夫。叶人くんといる時間が増えてから大人しくなったような気がする」
純粋な感謝が半分と、それから彼の反応を窺っているのが半分だった。
頭の片隅に居座る冷静な自分が釘を刺してくる。
「そっか、それは何よりだね。役に立てたならよかった。危険が遠ざかったなら、あと問題なのはその正体だけど……」
叶人くんが憂うように言いかけたそのとき、目の前に人影が飛び出してきた。
突然のことに驚いて足を止める。
わたしたちの前に立ちはだかるようにして現れたのは、何と涼と日和だった。
「それはおまえだろ?」
厳しく険しいような表情で、叶人くんを睨みつけながら涼が言い放つ。
「涼……?」