消して、奪って、きみだけを
思わぬ展開と不穏な空気に戸惑いながら呼ぶけれど、彼は叶人くんを捉えたまま揺るがなかった。
「ストーカーの正体はおまえだろっつってんだよ」
どうやらわたしたちのあとを追って、会話も聞いていたみたい。
やっぱりその疑惑はあれから涼の中で覆ることなく、いつしか確信へと変わったようだった。
「……ごめーん。止めようと思ったんだけど、飛び出していっちゃって」
そう言って苦笑する日和は、言葉通り本意ではなさそうだ。
とっさに涼についていかざるを得なかったみたい。
「なあ、答えてみろよ。羽衣の前ではっきりさせろ」
彼は怯むことなく叶人くんを責めるように詰め寄る。
ものものしい雰囲気に気圧されて何も言えないまま、思わず叶人くんを窺った。
「僕がストーカー? そんなわけないよ」
「嘘つくなよ、おまえの自作自演なんだろ。羽衣を怖がらせればそこにつけ込める。あえて自分が優しくして、守ったふりをすれば羽衣の信用を得られる」
この間わたしと日和に対して言っていた涼なりの推測を、単刀直入に本人にぶつけた。
「羽衣がストーカーに遭い始めたのもおまえが現れたタイミングだろ。どう考えたって無関係じゃねぇよ」
「……ちがう、僕じゃない。僕がわざと羽衣を怖がらせるなんて、そんなことするはずない。羽衣を守りたいだけだ」
「どうだか。はっきり言って、俺はおまえを信用できない。それ以前に変なこともあったしな」
もしかすると、それはわたしの記憶のことかもしれない。
直感的にそう思った。
涼も叶人くんも一歩も退かないまま、静かに火花が散り続ける。
一触即発だ。
普段は温厚な叶人くんも、冷静ながらいまばかりは眉を寄せていた。
ややあって、観念したように息をつく。
「きみがそこまで言うなら……仕方ないね」
揃って困惑していると、おもむろにスマホを取り出した。
「羽衣を不安にさせたくなくて黙ってたけど」
そう言って掲げられた画面には、SNSのダイレクトメッセージが表示されている。
【俺の羽衣に近づくな】
【俺の方が先に羽衣と出会ってた。俺の方が彼女をよく知ってる】
【邪魔するならただじゃおかない】
はっと息をのんだ。
目を疑うような内容だけれど、叶人くんを脅迫していると言える。
「これって……」
「少し前から届くようになったんだ。たぶん、羽衣のストーカーと同一人物だと思う」