消して、奪って、きみだけを
それを聞き、わたしも慌ててスマホを取り出す。
もしかしたらアカウントのIDが同じなんじゃないか、と踏んだのだけれど、照らし合わせてみると別だった。
「捨てアカをいくつも作ってるんじゃないかな。簡単に特定されないように」
「それはありそう。まさか、ストーカーが叶人くんにまで嫌がらせしてたとは……」
驚きと嫌悪をあらわに呟いた日和は思いきり顔をしかめる。
わたしも、そして涼も、予想外の事実に言葉を失っていた。
「本当はもっと慎重に、言い逃れできないような確証を得てから、警察にでも突き出そうと思ってたんだけどなぁ。……二度と羽衣に近づけないように」
ただひとり、冷静な叶人くんは淡々とそう言った。
先ほどまでとはちがう、冷ややかな双眸に図らずもぞくりと背筋が冷えた。
「羽衣を怖がらせたんだから、どんな目に遭っても文句言えないよね」
打って変わっていっそ楽しそうな声色は、だけど確かに怒りを含んでいるのが分かる。
叶人くんはわたしたちの横をすり抜け、来た道を数メートル引き返した。
そこにある電柱へ回り込み、にっこりと微笑みかける。
「……ね? ストーカーさん」
その言葉にまたしても息をのむと、心臓が強く打った。
(まさか、ずっと……?)
こんなに近くに、いつから潜んでいたんだろう。
いったい誰がそこにいるの?
あらゆる不安と恐怖が重々しく全身を巡って渦巻いた。
ざわざわと梢が揺れるように胸騒ぎがする。
やがて、電柱の影から姿を現したのは────。
「高橋くん……?」
信じられない気持ちでその名前を口にした。
彼はちらりとこちらを一瞥したきり、きまりが悪そうにうつむく。
「おまえなのか? 本当に?」
「……そうだよ」
念を押すように涼が確かめると、高橋くんは視線を落としたまま首肯する。
「手紙とかも? 脅迫もぜんぶ?」
「だからそうだって言ってんだろ!」
あっけなくすべてを認めた、というよりは、認めざるを得ない状況に立たされて開き直ったようだった。
いらついたように叶人くんを睨めつける。
「最悪だよ。おまえが転校なんてしてこなければ、俺は……」
「どうにかなってたと思う? 羽衣と?」
叶人くんは一切怯むことなく、温度のない微笑をたたえたまま首を傾げた。
高橋くんが目を剥く。
「……っ」
「冗談だよね? 挨拶程度しかできないで、つきまとったり色々送りつけたり散々怖い思いさせておいて。そんな人を羽衣が好いてくれると思うの?」
「うるせぇな、おまえに何が分かるんだよ!」
「分かりたくもないよ、ストーカーの気持ちなんて」
軽蔑するほどとことん冷淡に突き放した叶人くんに、高橋くんは掴みかかるほどの勢いだった。