消して、奪って、きみだけを
わたしは色々と衝撃が重なって、混乱の渦中へと放り出されていた。
ストーカーの正体もさることながら、ふいに明かされた高橋くんの想いにも驚いてしまう。
(全然、気づかなかった)
優しくて色々と気にかけてくれる彼を、話しやすくていい人だと思っていた。
それなのに────。
(本当に高橋くんなの……?)
まさかあの笑顔の裏に、こんな本性が隠れていたなんて。
叶人くんが距離を取ると、とっさに涼が動き、興奮状態にある高橋くんをなだめるように押さえる。
そうしたまま、涼は尋ねた。
「なあ、おまえの想いは分かったけど……。何でそんなことしたんだ? 羽衣が嫌がるとは思わなかったのか?」
あくまで責めるような口調ではなかったからか、高橋くんから徐々に熱が引いていったのが見て取れる。
「……いま思えば、確かに間違ってた。でも俺もいっぱいいっぱいだったんだ。正直、焦ってた。最初からこいつが気に食わなかったんだよ」
突きつけるように叶人くんを指すけれど、先ほどまでの興奮がぶり返す様子はない。
ただ悔いるように言葉を繋ぐ。
「俺の方が先に見てたのに。好きだったのに。それで、そのときちょうど“友だち”とDMしてて、相談みたいになって……そのアドバイスに従ったっていうか。いや、俺が冷静じゃなかったせいでこじれたんだけど」
「どういうこと? 友だちって誰?」
訝しげに日和が口を挟むと、高橋くんはかぶりを振った。
「分からない。SNSで知り合ったやつだから顔も名前も知らない。ただ、同じアーティストの曲が好きって共通点から親しくなって……。歌詞の話してて、そこから恋愛話に発展したんだ」
「それで相談してたってことね、あんたの状況を。そしたら、ストーカーするようアドバイスされたわけ?」
「ちがう、そうじゃなくて。……いいや、もう。これだよ」
半ば投げやりにスマホを日和に渡すと、涼もそちらへ歩み寄る。
わたしまで見ていいものか迷ったけれど、知りたいと思った。
何がどうなってストーカー行為に及ぶ羽目になったのか。
高橋くんに悪意があったのかどうか。
────確かにメッセージでは、現状を打ち明けた彼が嘆いていた。
高橋くんの想いの深さもだけれど、彼が叶人くんを気に食わないと思っていたことも知らなかった。
だけど、思い返してみれば、一瞬のやり取りさえ友好的とは言いがたかったかもしれない。
【このままじゃその人に取られちゃいそうだね】
【それでもいいの?】