消して、奪って、きみだけを
◇
「羽衣は怖かったと思うけど、何事もないうちに解決してよかった。これでもう心配いらないよ」
「……うん、ありがとう。本当にぜんぶ叶人くんのお陰だよ」
改めて叶人くんと帰路につくと、まずいたたまれない気持ちになった。
たとえ一瞬でも流されて、彼を疑いかけたことがひどく申し訳ない。
そのことに気づいているのかどうか分からないけれど、当然のように言及もしないでただわたしを気にかけてくれる。
それが叶人くんの優しさだと、どうして最初から素直に受け取れなかったんだろう。
「大丈夫? よっぽど嫌な思いした? ……って、当然だよね。あんな目に遭ったら」
一件落着したというのに、晴れないわたしの表情を見て彼が眉を下げる。
慌てて「ううん」と首を横に振った。
「そうじゃなくて……。ごめんね。涼の言ってたこと、わたしも一瞬信じかけちゃった」
叶人くんの目的が復讐だとか、過去に何かしたわたしを許していないだとか。
“ありえない”と突っぱねる傍らで怖くなった。
無責任にもあらゆることを忘れたわたしは、このことまでなかったことにはできず、正直に打ち明けてしまった。
さすがの彼でも、それこそ身勝手だと怒るかもしれない。傷つけるかもしれない。
だけど、ずるい逃げ方はできない。
「……そうだったんだ」
叶人くんは少し驚いたように言う。
寂しげな横顔に胸が締めつけられた。
「ごめ────」
「仕方ないよ、それだけ追い詰められてたんだもんね。いまは、誤解は解けた?」
いつになく不安そうに見えて、慌てて何度も頷いた。
もう疑う余地なんてないし、恐れる必要もない。
ひたむきな彼の優しさにわたしが救われたことは事実だ。
「それならいい。なおさらよかった」
ふわりとほどけて和らいだ叶人くんの笑顔は、いまはきっとわたししか知らない。
心からほっとしているように見えた。
わたしは言葉を探すように一度うつむき、鞄を持ち直す。
「……でも、今回のことはもうこれ以上おおごとにしないで欲しいんだ」
「どうして?」
「高橋くんも反省してたみたいだし、わたしにも叶人くんにも謝ってくれたし……二度としないって約束もしてくれた。それで十分かなって」
叶人くんが口にした“警察”というものものしい言葉が尾を引いていて不安だった。
今回に関しては、そこまでしなくてもいい気がする。
確かに嫌な思いや怖い思いはさせられたけれど、わたしの代わりに叶人くんが怒ってくれたことで少しは気が楽になった。
もうこれ以上、事を荒立てたくない。
「羽衣は怖かったと思うけど、何事もないうちに解決してよかった。これでもう心配いらないよ」
「……うん、ありがとう。本当にぜんぶ叶人くんのお陰だよ」
改めて叶人くんと帰路につくと、まずいたたまれない気持ちになった。
たとえ一瞬でも流されて、彼を疑いかけたことがひどく申し訳ない。
そのことに気づいているのかどうか分からないけれど、当然のように言及もしないでただわたしを気にかけてくれる。
それが叶人くんの優しさだと、どうして最初から素直に受け取れなかったんだろう。
「大丈夫? よっぽど嫌な思いした? ……って、当然だよね。あんな目に遭ったら」
一件落着したというのに、晴れないわたしの表情を見て彼が眉を下げる。
慌てて「ううん」と首を横に振った。
「そうじゃなくて……。ごめんね。涼の言ってたこと、わたしも一瞬信じかけちゃった」
叶人くんの目的が復讐だとか、過去に何かしたわたしを許していないだとか。
“ありえない”と突っぱねる傍らで怖くなった。
無責任にもあらゆることを忘れたわたしは、このことまでなかったことにはできず、正直に打ち明けてしまった。
さすがの彼でも、それこそ身勝手だと怒るかもしれない。傷つけるかもしれない。
だけど、ずるい逃げ方はできない。
「……そうだったんだ」
叶人くんは少し驚いたように言う。
寂しげな横顔に胸が締めつけられた。
「ごめ────」
「仕方ないよ、それだけ追い詰められてたんだもんね。いまは、誤解は解けた?」
いつになく不安そうに見えて、慌てて何度も頷いた。
もう疑う余地なんてないし、恐れる必要もない。
ひたむきな彼の優しさにわたしが救われたことは事実だ。
「それならいい。なおさらよかった」
ふわりとほどけて和らいだ叶人くんの笑顔は、いまはきっとわたししか知らない。
心からほっとしているように見えた。
わたしは言葉を探すように一度うつむき、鞄を持ち直す。
「……でも、今回のことはもうこれ以上おおごとにしないで欲しいんだ」
「どうして?」
「高橋くんも反省してたみたいだし、わたしにも叶人くんにも謝ってくれたし……二度としないって約束もしてくれた。それで十分かなって」
叶人くんが口にした“警察”というものものしい言葉が尾を引いていて不安だった。
今回に関しては、そこまでしなくてもいい気がする。
確かに嫌な思いや怖い思いはさせられたけれど、わたしの代わりに叶人くんが怒ってくれたことで少しは気が楽になった。
もうこれ以上、事を荒立てたくない。