消して、奪って、きみだけを
「なに?」
「前に涼が言ってたでしょ? 再会は偶然か、って。それが、偶然じゃなかったの。わたしがこの学校にいるって知って、だから自分から転校してきたんだって」
すっと空気の温度が下がったのを肌で感じた。
涼と日和は顔を見合わせ、わたしもつい視線を落としてしまう。
もし、これが純粋な初恋で運命的な再会なら、こんなロマンチックな展開にただ酔えたかもしれない。
だけど、わたしは彼に負い目がある。
忘れてしまった記憶の中で、わたしは彼に対して罪を犯したはずなんだ。
7年経っても手放せず、囚われ続けるほどの罪悪感を抱えていた。
それを思えば、大したことないわけがない。
「……おまえはどう思ってんの? うれしかったか? あいつの気持ちと、7年越しに会いにきたこと」
一切茶化すことなく、涼が真剣に尋ねてくる。
鋭すぎて怯んでしまいそうな眼差しはわたしを捉えて離さない。
「……正直、分からない」
叶人くんの優しさには確かに救われている反面、やっぱりどこかで身構えてしまう。
それはこの前みたいに“復讐”をにおわされたことによる不安や恐怖のせいじゃなくて、もっと単純な違和感。
どうしてそこまでしてくれるのか分からないのだ。
以前にも同じことを考えた。
過去にわたしが彼に何かしてしまったなら、優しくしたり尽くしたりする理由なんてない。
謝らなければならないことをしておいて、いまはさっぱり忘れてしまっているわたしを憎みこそすれ、好きになる理由もない。
だからこそ、まだ素直に彼のことを信じきれないでいる。
わたしにとっても初恋だったけれど“うれしい”より先に、感情が迷子になってしまっていた。
「うーん……あたしも、少女漫画みたい! なんてもう軽々しく言えないな。ずっと好きだったのは本当かもしれないけど、わざわざ転校までしてくるなんてちょっと度を越してる気がする」
日和が肩をすくめて苦笑すると、頷いた涼は近くの席から椅子を引いてきて座る。
「つか、その告白自体が嘘かもしれねぇだろ」
わたしの目を見据え、訴えかけるように言葉を繋ぐ。
「それこそ復讐が目的なら、好きだって言って油断させるため。近づいても警戒されないためにそう言ったのかもしれない。どっちにしても簡単に信用するべきじゃねぇよ」
「涼……。こないだのことで誤解は解けたと思ったのに」