消して、奪って、きみだけを
つい、そう口をついてしまい眉を下げる。
彼はストーカーが叶人くんだと睨んでいたけれど、実際には高橋くんの仕業だった。
そう判明したことで涼も謝っていたのに、疑惑の根っこの部分は刈り取られずに残っていたみたい。
「誤解なんてしてたつもりはねぇけどな、俺は。悪ぃけど、いまだってあいつへの見方は変わってないし」
その“悪い”はきっと、叶人くんではなくわたしに対するものだろう。
だけど、わたしも前みたいに怒れなかった。
怒るべきなのか悲しむべきなのか、それさえ分からず反応を決めかねている。
涼にここまで何度も繰り返し戒められると、ただならぬ予感がするのだ。
いつもなら、前と同じように思い過ごしだと笑い飛ばすであろう日和もさすがに茶化さなかった。
「あのときははっきり言えなかったけど……高橋の一件もやっぱ何か変だ。解せない」
「この間から何がそんなに解せないの?」
ふたりの口ぶりからして、どうやら涼はずっとこの調子みたい。
謝りはしたものの、納得がいっていない様子だ。
「手紙なんかが高橋の仕業だったのは確かでも、タイミングも都合もよすぎるだろ?」
涼は眉を寄せ、さっきの日和みたいに前傾姿勢になる。
誰にとって都合がいいか、というのはもはや言葉にするまでもなかった。
「あのSNSの“友だち”だって何者なんだよ。高橋も間違いなく悪いけど、半分はそいつにそそのかされたようなもんだろ」
どきりとする。
それはわたしもあのとき感じた違和感だった。
────このままじゃその人に取られちゃいそうだね。
────それでもいいの?
高橋くんの焦燥を煽るような文言と、匿名での勝手な行動を正当化するようなアドバイス。
いま思い返しても確かに引っかかる。
「そうかもね、結果としてストーカー行為を誘導してるし。じゃあ何が正解だったのか……っていうか、目的が分かんない」
「そうだろ?」
日和の言葉にもまた同感だった。
あの“友だち”はどういうつもりで高橋くんにそんなアドバイスをしたんだろう。
一応は解決したものの、解せない、と言いたくなる涼の気持ちも分かる。
だからって、何もかも“叶人くんが怪しい”に着地させるのは強引すぎると思うけれど。
(あれ? でも、そういえば……)
唐突に思い出してひらめき、眉を寄せる。
────怖かったよね。持ちものまで勝手に触られてたなんて、知らない誰かが入り込んでくるみたいで。
そんな叶人くんの言葉が思い出されて胸がざわめいた。
(わたし、そんなこと言ったっけ?)