消して、奪って、きみだけを
手紙そのものは見せたし、机や靴箱の中に入れられていることがあったという話もした。
だけど、それは叶人くんがそう言ってくれたあとだ。
それに、最終的に鞄にまで手紙が入れられていたことは結局口にしていないはず。
意図的に隠したわけじゃなく、ただタイミングを逸しただけなのだけれど。
(知ってたの……? どうして?)
戸惑いと困惑が広がっていき、身体の芯が冷たく強張る。
あのときはあたたかい優しさで寄り添ってくれたように感じてほっとしたのに、いまさら気づいてしまった事実に動揺が巡った。
「ま、とにかく」
その声にはたと我に返る。
ふと表情を和らげた日和はわたしに向き直った。
「また何かあったらあたしに……あたしたちに相談して。叶人くんのことでもそれ以外でも、何でも頼ってくれていいから」
改めてそう言ってくれた日和と、それから涼を見やる。
彼もまた強く頷いてくれて、何だか当初より随分と心が軽くなったような気がした。
「……ありがとう、本当に」
ふたりがいてくれてよかった、と何度目か分からない実感が全身に染み渡る。
とんでもない可能性に行き着いてしまったけれど、目先の問題は積まれたままだけれど、叶人くんや自分の心に向き合う勇気が湧いた。
◆
【いままでずっと見てきたんでしょ? 気づいて欲しいなら、それを彼女に伝えればいいだけ】
【どうやって?】
【簡単なことだよ。きみなら当然、好きなものだって知ってるよね? それをプレゼントしてあげたら喜ぶにちがいない】
【名前はまだ出さない方がいい。誰だろう? って考えてもらえるから。それだけ、きみのことを意識する時間が増える】
並んだ吹き出しの下に、未読のメッセージが届いていた。
怒涛の勢いを感じさせるほど立て続けに。
【どうなってんだよ、おまえのせいで台無しになったんだけど】
【彼女にもバレたし、嫌われた。どう責任取ってくれるんだよ】
【何とか言えよ!】
直接相まみえたときの吠え面が思い出され、思わず乾いた笑いがこぼれる。
なんて威勢のいいことだろう、自業自得のくせに。
しかし、お陰でうまく運んだ。
不安定な精神状態とおめでたい想像力のお陰でまんまと思い通り、墓穴を掘って自滅してくれた。
(まあ、脅威ですらなかったけど)
それでも、焦ったら理性を飛ばすことがこの件で証明された。
追い詰められたら何をしでかすか分からない危険な性分の持ち主。
そんなやつを、羽衣の周りから早々に排除できたのは何よりだ。