消して、奪って、きみだけを
放課後、ランドセルを背負って昇降口を出たら、たまたま校舎裏へ向かう叶人くんの姿を見かけた。
何をしているんだろう?
些細な興味本位でこっそりあとをつけたら、彼は誰もいない裏庭で足を止めた。
小さなスコップを握り締め、しゃがみ込んだまましばらく動かなくなった。
どうしたんだろう?
あのスコップは何だろう?
見つからないよう隠れていたのに、気になって思わず身を乗り出してしまった。
ぱき、と足元で枝の折れる音が鳴る。
『あ……っ』
校庭の喧騒にも及ばないささやかな音のはずなのに、つんざくほど強烈に響いた。
弾かれたように顔を上げた叶人くんは驚いて目を見張る。
その拍子に気がついた。
彼の足元で小鳥が横たわっていることに。
『その子……』
白と黒の模様があるけれど、艶を失った羽根は乱れていた。
微動だにしないから何となく直視できなくなって、目を開いているのか閉じているのかも分からない。
だけど、たぶんもう亡くなっている。
『……っ』
叶人くんに目を戻すと、彼は慌てた様子で立ち上がった。
スコップを取り落としつつも、懸命に何かを訴えかけるように首を横に振る。
そのとき、初めてしっかりと目を見て向き合った。
宝石のようなガラス玉のようなその双眸に、まともにわたしを映したのも初めてだろう。
いまは焦りや動揺が覗けたけれど、その奥に別の色が見えた。
深い悲しみのような底知れない暗色。
幼かったわたしはただ、小鳥が死んじゃったことが悲しいのだと思った。
そっと歩み寄ると落ちたスコップを拾い上げる。
『一緒に埋めてあげよう』
そう言うと、また驚いたように彼の瞳が揺れた。
ややあって小さな頷きが返ってくる。
わたしたちは裏庭に小鳥のお墓を作り、雑草のそばに咲いていた花を摘んで供えた。
手を合わせている間、校庭の方から部活のかけ声が風に乗って流れてきて、開け放たれた窓からは楽器の音が聞こえてきた。
ふ、と目を開けて隣を向くと、綺麗な横顔が見えた。
長い睫毛も白い肌も儚げで、いつも憂いを帯びていて何だか寂しそう。
そのうち目を開けた彼が、そのままこちらを向いた。
『……こわくないの? 僕のこと』