消して、奪って、きみだけを

 その説明を受けたわたしと松田くんは納得して何度も頷いた。
 お陰で完全に理解が追いついた。

「さすが早川くん。すごく分かりやすい」

「当たり前だよな! クラス1位だろ?」

「学年だ」

 特に謙遜(けんそん)することもなく、満更(まんざら)でもなさそうに松田くんの言葉を訂正する。
 清々しいほど自信家なようで、松田くんはうれしそうに手を叩いた。

「じゃ、俺らの班は勝ち確だな! 天才がいるから最高評価で間違いない」

「そうだね。それで、担当はどうする? それぞれ係を割り振った方がいいと思うんだけど」

 それまで成り行きを見守っていた叶人くんがにこやかに口を開く。
 早川くんは「同感だ」と頷き、松田くんは「係って?」と首を傾げた。

「必要なのは……記録と管理、経過の撮影、それからレポートやレジュメのまとめと最終的に発表する係かな。その役割分担をした方がスムーズじゃない?」

「おー、確かに。こっちにも天才がいる」

 叶人くんの提案に、またしても松田くんがうれしそうに声を上げる。
 和やかな空気感が居心地よくて思わず笑ってしまう。

 同時に、自然と溶け込んでいる叶人くんを見てひっそりと安堵した。
 あの頃を思えば、いまは“ひとりぼっち”の影もない。

 涼と日和もそうだけれど、誰かとの繋がりや時間が彼にとっても心地よいものだったらいいな。
 そんなことを願わずにはいられなかった。

「……じゃあ、俺はレポートとレジュメをまとめる担当で」

 おもむろに早川くんが立候補してくれて、それを聞いた松田くんは再び勢いよく手を打つ。

「それ完璧、めっちゃ適役じゃん。じゃ、俺は発表係ってことでいい?」

「うん、それも松田くんにぴったりだね」

 そう言って笑うと、彼は「だろ」と得意気に胸を張った。

「よし、楽な仕事だー」

「まじめにやれよ、発表まで込みなんだから」

「分かってるって。俺に任せとけ」

 釘を刺した早川くんにも朗々(ろうろう)と笑い返す松田くん。
 すごいな、と率直に思った。
 全員の前での発表が“楽”だなんて感覚は、わたしには理解できない。

 精神的な負荷はほかの役割とも釣り合っている気がするけれど、もともと人前で目立つことが好きな性分(しょうぶん)の彼にとっては、仕事量の少なさが本望らしかった。

「羽衣はどっちがいい?」

 叶人くんに問いかけられ、少し考え込む。

 記録と管理の係も撮影係も、主に実験中に重要となる役割だろう。
 レポートも発表もそれらのデータをもとにすることになる。

(どっちの方が大変かな?)

 ここまでわたしは何もしていないし、みんなのように突出(とっしゅつ)した何かがあるわけでもない。
 だからこそ、大変な仕事を引き受けることで役に立てるのならそれが最善だった。
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