消して、奪って、きみだけを
探してみても、レジュメはどこにもなかった。
取り出した覚えはないし、それこそどこかに紛れ込んだのかもしれない。
そう思ってファイルも鞄もひっくり返して探してみるものの、やっぱりどこにも見当たらない。
「どうして……」
「どういうことだよ。レジュメも盗まれた?」
「……最悪だな、ふたりして」
いっそうイライラした様子で眉をひそめる早川くんに松田くんが気色ばんだ。
何か言い返そうとしたそのとき、背後から声をかけられる。
「おはよう、何かあったの?」
鞄を提げたままの叶人くんが、尋常ならざるわたしたちの様子を見て異常を察したようだった。
レポートを含む資料とレジュメを紛失してしまったことを伝えるも、彼は落ち着いたまま冷静さを損なわない。
「それなら大丈夫だよ。羽衣がつけてた記録用のレジュメの写真も撮ってあるから」
そう言ってスマホを取り出すと写真を提示する。
そこには確かにわたしが書いたレジュメがおさまっていた。
「いつの間に……」
「実験が終わった日に一応ね。言うなればバックアップかな、役に立ちそうでよかった」
「おまえ……マジで天才か? ナイス!」
すっかり調子を取り戻した松田くんが安堵と感心で表情を緩め、叶人くんの肩を叩く。
絶体絶命かに思われたけれど、まさしく窮地に射し込んだ希望の光だ。
わたしもほっと息をつき、早川くんにもまたいくらか余裕が戻ってきたようだった。
────わたしたちは休み時間を返上し、叶人くんのバックアップをもとに、早川くんが中心となってレポートと資料を作り直すことになった。
日和はわたしのもとへ来ると、訝しそうに首を傾げる。
「どうしたの、羽衣たちの班。朝、揉めてなかった? またトラブル?」
「ううん、大したことじゃ……。ごめん、あとで話す!」
シャーペンを走らせる手を止めている時間がなくて、そう断るととにかく怒涛の勢いで書き上げていく。
4人でそうした結果、どうにか授業までに仕上げることができた。
レポートはむしろブラッシュアップできたお陰でもともとのものよりよいものになったし、発表は松田くんが持ち前のキャラで堂々と乗り切ってくれて、授業が終わるとやっと気が抜けた。
(終わった。よかった……)
目まぐるしい波乱のグループワークは、これでどうにか一件落着だ。
本当に色々あったけれど、無事に済んだことへの安堵と達成感でようやく息をつける。
「……あのさ」
休み時間の喧騒の中、いつになくまじめな様子で松田くんが切り出す。