消して、奪って、きみだけを
「……さっすが、羽衣のことはよく分かってるねー」
神妙な雰囲気を吹き飛ばすように日和はいつも通り笑った。
結局、茶化さずにはいられないらしい。
「で、そんな名探偵は何を隠してるの?」
頬杖をつきながら首を傾げられるが、何のことだかぴんと来なくて逆に首を傾げてしまう。
「とぼけないでよ。最近、様子おかしいのはあんたもでしょ? ずっとスマホ気にしてるし、何かとどっか行っちゃうし……別行動してる理由は何なの?」
「あー、そのことか」
立原のことだと思い至って、たまらず苦い表情を浮かべる。
ぶつかったときに俺が怪我をさせてしまったことと、その責任を取るために不便を補っていることを日和に説明した。
「なんだ、そういうこと? どうして羽衣に言わないの?」
「……変に勘違いされたくねぇし。言うほどのことでもないだろ? おまえも羽衣には黙っててくれ」
「かっこつけたいんだ。頼れる男でいるために」
からかうように言われるが、それも否定できない。
一緒にいるところをなるべく見られたくはないし、もっと言えばそんなふうにほかの誰かを気にかけている姿を見て誤解されたくない。
それだけじゃなく、日和の言う理由も正直持ち合わせていた。
堂々とあいつの隣に立てる自分でいたい。
無責任だと失望されたくもない。
「あー、もう。そんなことはどうでもいいから!」
口にしたらまた餌を与えることになりそうで、強引に打ち切った。
表情を引き締めて日和を見据える。
「おまえも羽衣が心配だろ? だからさ、暴こうぜ。あいつのこと」
「暴くって?」
「そうだな……。若宮の本性を暴く証拠でも掴むか、羽衣の記憶の異変を暴くか」
羽衣の目を覚まさせるため、若宮という危険を遠ざけるため、ひいては羽衣を守るために、できることはそれしかないような気がする。
「どうだ?」
「……うん、確かにこのままじゃもっと悪いことが起きそう。まあ、あたしは叶人くんが怪しいってより、羽衣を取り戻したいっていうか、羽衣に戻って欲しいっていうか。そんな感じだけど」
一番の動機はちがっても、あいつを守りたいという気持ちは同じだろう。
日和ならそうだろうと思った。
「よし、決まりだな。でも気をつけねぇと……あいつが記憶をどうにかできるようなやつなら、下手に勘づかれると俺たちもやばい」
若宮への警戒心ごと忘れてしまったらおしまいだ。
────こうして、密かに“共同戦線”を結んだ俺たちはしっかりと頷き合った。
◇
昨日も立ち寄った公園に寄り道すると、今日はベンチではなく噴水のふちに腰を下ろした。
きらきらと光を弾く水は宝石の欠片みたい。
「羽衣にプレゼントがあるんだ」
唐突にそう言った叶人くんは白い箱を差し出してきた。
桜みたいな優しいピンク色のリボンでラッピングされている。