消して、奪って、きみだけを
何だろう、と思いながら受け取ると「開けてみて」と促された。
そっとリボンをほどいて蓋を開ける。
中にはローズゴールドのブレスレットが入っていた。
(かわいい……)
ハート型の鍵穴や、きらりと控えめに輝くチャームのあしらわれた、華奢で上品なデザイン。
思わず見とれかけて、はたと我に返った。
「で、でも……わたし、叶人くんにもらってばっかり。申し訳なくて受け取れないよ」
「じゃあ、誕生日プレゼントってことで。会えなかった7回の誕生日に渡せなかった分」
向けられた微笑みにもいまは胸が苦しくなる。
本当にいいのかな。
与えてもらうばかりで何も返せていないのに。
傾いた心が落とす影に飲まれそうになったとき、叶人くんが「貸して」とブレスレットを手に取った。
「つけてあげる」
言われるがまま、左手首に巻かれたそれが光を弾いて輝く。
ひんやりと重たい気がしてブレスレットを見つめたまま黙り込んでいると、その上から彼がてのひらで包み込むようにして手首を握った。
「……あのしおりは、僕の誕生日に羽衣がくれたものだったんだよ」
瞬いた瞼の裏を一瞬、桜の花びらが泳いでいく。
“いま”を映したら幻みたいに消え去った。
「僕にとってのしおりみたいに、これが羽衣のお守りになったらうれしいんだけどな」
ブレスレットごと手首を包んで、叶人くんははにかむ。
そんなささやかな願いが隠されていたとは思わなかった。
優しさと深い想いの込められたこのブレスレットは、わたしが失った過去と、ふたりで過ごすいまの時間を繋ぐ魔法みたい。
先ほどまでの冷たさも重みも消えて、すっかり手首に馴染んでいた。
叶人くんの気持ちが純粋にうれしい。
「ありがとう、大事にする」
心から告げると、彼はうれしそうに微笑んだ。
「片時も外さないで、いつもつけててね。……ずっと」
────しばらくブレスレットを眺めながら、甘い夢心地に浸った。
鳴り止まない鼓動がわたしの本音だと思う。
使命感や罪悪感だけじゃなく、いつしかそれ以上に自分の意思で“叶人くんと一緒にいたい”と思うようになっていることに気がついた。